ポルシェ・マカン Sへ試乗 小変更で380ps スポーツカー・メーカーが作るSUV

公開 : 2022.01.16 08:25

洗練されすぎと感じるほどの多能さ

発進させてみると、マカン Sの運転のしやすさに感心する。運転席からの視界に優れ、ボディは適度にコンパクト。エンジンは低回転域から滑らかで、粘り強い。

デュアルクラッチを備えるATだが、Dに入れたままでは、変速を感知できないほど動作は滑らか。数年前のモノより、ずっと洗練度は高められた。

ポルシェ・マカン S(英国仕様)
ポルシェ・マカン S(英国仕様)

右足に力を込めれば、苦もなく勇ましく加速していく。パワーの放出とともにV6エンジンはたくましいサウンドを放つが、うるさすぎることはない。

操縦性や安定性にも唸らされる。ステアリングホイールの重み付けは非の打ち所がなく、適度に敏感。大きすぎないボディと相まって、郊外の道を軽快に走り回れる。

ポルシェスポーツカーとは対照的に、ロードノイズは我慢できる範囲にまで遮断できていることも特長。クラスをリードできるほど、静かではないが。

GTSが履く21インチではなく、20インチ・ホイールを履いていることが、功を奏しているのだろう。サイドウォールの高さがありノイズは立ちにくく、柔軟性にも優れている。

皮肉的かもしれないが、マカン Sは少し洗練されすぎているとさえ筆者は感じた。極めて安楽に運転でき、秀でた能力を実感しにくい。能ある鷹は、ということなのだろう。

もし市街地を中心に運転していて、アクセルペダルのストロークを使い切らなければ、フォルクスワーゲン・グループのベーシックなファミリーカーと、明確な違いは感じられないかもしれない。エンブレムを隠したら、特に。

スポーツカーメーカーが作るSUV

とはいえ、マカンの多能さは間違いない。世界各国にドライビング・エクスペリエンス・センターを構えるスポーツカーメーカー、ポルシェが作るコンパクトSUVだ。英国なら、シルバーストーン・サーキットの横、日本なら千葉県の木更津にある。

マカン Sのオーナーになったらセンターを訪ねて、インストラクターと一緒に走ってみて欲しい。本物のスポーツカーに迫るほどの能力を、その気になれば解き放てることに気付けるはず。

ポルシェ・マカン S(英国仕様)
ポルシェ・マカン S(英国仕様)

普段使いにもぴったりなポルシェ・マカン S。日常的に楽しめるパフォーマンスも、マイナーチェンジを経て高められている。今後も、多くのユーザーを獲得するのだろう。

ポルシェ・マカン S(英国仕様)のスペック

英国価格:5万3500ポンド(約829万円)
全長:4726mm
全幅:1922mm
全高:1621mm
最高速度:259km/h
0-100km/h加速:4.6秒
燃費:8.5-9.0km/L
CO2排出量:251-265g/km
車両重量:1930kg
パワートレイン:V型6気筒2894ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:380ps/5200-6700rpm
最大トルク:52.7kg-m/1850-5000rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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