ベントレーの会長に訊く 好調な販売の原動力は 完全EV化に向けての戦略は クルーの今後は

公開 : 2022.02.19 20:25

EVではないサステイナブルなエネルギー源の問題

−−ソフトウェアの制作や、高級車らしい充電方法はどのようになっているのでしょうか。
「わたしたちには、5つの利用ケースと呼ぶミッションがあります。最高のサウンドは体験できなくても、それ以外は最高を味わえるクルマをつくるためです。もちろん、ラグジュアリーな。

自動運転が普及しはじめ、ひとびとが車内でできることが増えていくにつれ、本当に運転手がいても、それに代わるデジタル技術を用いるのだとしても、キャビンでの体験をまったく違うレベルへ引き上げたいと考えています。ですから、見栄えやデザイン、ディスプレイのアイコンの見せ方などが問題ではありません。どのような機能性を盛り込めるかが重要です。また、すでに5つのアクティビティの場を、わたしたちは得ています。

代替燃料については、製造工程まで含めたサステイナビリティを考慮している。
代替燃料については、製造工程まで含めたサステイナビリティを考慮している。

ソフトウェアのいいところは、ハードウェアほど高価ではないことです。とくに、室内に関しては。

グループ内だけでなく、いくつかのスタートアップ企業とも協力して取り組んでいるのは、自動にしろ手動にしろ、自宅での充電に関するソリューションです。それらすべてが、新機軸も活用して比較的低コストで行えて、手間を減らしてくれます」。

−−合成燃料や水素燃料電池の導入は検討していますか。
「そうした代替燃料のテクノロジーは熟成されてきていて、市場投入される際には産業として成立し、性能が保証され、しかも安全なものになっているでしょう。

水素はまさにそうです。クルマに使うのは、実行可能な選択肢です。しかし、生産には多くのエネルギーを必要とします。しかも、そのエネルギーは再生不可能だとすれば、化石燃料を燃やしたエネルギーで生産した水素をエンジンで燃焼させるより、オイルを作って使う方がまだマシです。ですから、再生可能な生産方法が確立されなければ、水素は有効な策とはなりません。

エシカルと環境配慮についても、ジレンマがあります。もし、システム全体で再生可能エネルギーを使えないまでも、水素生産に再生可能エネルギーを使うのならば、クルマのエネルギー源だけを置き換えるに過ぎないことになります。水素を環境対応燃料として十分に機能させるには、エネルギーシステムをトータルでグリーンなものにする必要があります」。

真の成功はEV化を達成してから

−−販売面の成功について、どれくらい誇らしく思っていますか。
「よく言うじゃないですか、おごれるものは久しからず、って。勘違いしていただきたくはないのですが、2021年については間違いなくすばらしい結果でした。しかし、それが2020年に達成できていたら、もっとよかったと思っています。新型コロナの影響が出る前に、そうなる準備ができていたらなおよかった、ということです。新型コロナの影響を克服して、このみごとな結果を残すことができたのは、ひとえにスタッフたちのパフォーマンスや能力のおかげです。

もうひとつ、数字をお伝えしましょう。2021年は過去最大の受注を抱えて始まりました。そして、31%の成長を果たしました。年末時点での受注は、1月1日のそれを30%上回りました。つまり、販売台数が30%伸びただけでなく、新たな受注も30%増えたのです。

ホールマーク会長お気に入りの一台は、ポルシェ991.2のGT3RS
ホールマーク会長お気に入りの一台は、ポルシェ991.2のGT3RS

本当に胸を張れるのは、EVの開発が完了して最初の1台をデリバリーし、2030年までにサステイナブルでカーボンニュートラルなベントレーへのシフトが始まるときです。うまくいけば、お客様はすでにおっしゃってくださっているとおり賛同してくださるでしょう。そうなれば、わたしたちはほかをリードしつつ、持続できる高級車メーカーになれるはずです」。

−−ところで、今お乗りのクルマはなんですか。
ベンテイガ・ハイブリッドです」。

−−お気に入りのクルマは。
「う〜ん、それは子どものうちで誰が一番かと聞くようなものですよ。でも、ポルシェ991.2のGT3RSですね」。

−−好きなお菓子は。
「マッコイのギザギザなチップスですね。チリはできるだけ多めで」。

−−好きな本は。
「ジョン・スタインベックの『怒りの葡萄』です」。

−−ルイス・ハミルトンとマックス・フェルスタッペンなら。
「ルイスです」。

−−最近の休日は、どこへどうやって行きましたか。
「マヨルカへ。飛行機で」。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ピアス・ワード

    Piers Ward

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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