クルマ界のアベンジャーズ フォルクスワーゲン・ゴルフR エステートへ試乗 多能なマルチプレイヤー 後編

公開 : 2022.03.28 08:26

速く実用的で、コンパクトな四輪駆動のゴルフRに、ステーションワゴンが登場。英国編集部が評価しました。

先代と同様に多能なマルチプレイヤー

8代目フォルクスワーゲン・ゴルフへ登場した、R ヴァリアント。走り出せば、先代までと同様に多能なマルチプレイヤーであることを再認識させられる。

サスペンションは先代より硬く、オプションとなる19インチ・ホイールのタイヤは薄く、乗り心地は褒めにくい。それでも、基本的なストロングポイントを揺るがすほどではない。

そんな乗り心地も、オプションでアダプティブダンパーを搭載すれば、路面へ順応させることができる。ソフトな状態にすれば、程よい衝撃吸収性が生まれ、快適に一般道を移動できる。

反面、レース・モードを選択すると、一気に引き締まり緊張感が高まる。グリップ力や俊敏性、ドライバーとの一体感などは、ルノーメガーヌR.S.やシビック・タイプRなどが備える高い次元には届かないかもしれない。しかし、肉薄はできている。

四輪駆動システムとアクティブ・リア・ディファレンシャルは、積極的な回頭性には焦点が向けられていない様子。パワーオンの状態でも、安定性を保つ側に機能する。だが、狙ったラインは忠実に辿れる。

レース・モードなどスポーツ度の高いドライブモードでは、5気筒ユニットのような人為的なサウンドが響く。もし気に入らなければ、インディビジュアル・モードでステアリングやサスペンション、パワートレインの設定と同じく、切り替えられる。

完璧なパフォーマンス・ワゴン

個人的には、ドライブモード・メニューの内容は、もう少し煮詰められる余地があると思う。スタビリティ・コントロールとトランスミッションの設定は、インディビジュアル・モードの1つとして登録できないためだ。BMWなどの例を参考にして欲しい。

メーターパネルはモニター式になり、ダッシュボード中央には、大きなタッチモニターが備わる。ドライブモードや運転支援システムの変更など、基本的な車載機能は、このタッチモニターを介することになる。筆者は、これも少し扱いにくいと感じた。

フォルクスワーゲン・ゴルフR エステート(ヴァリアント/英国仕様)
フォルクスワーゲン・ゴルフR エステート(ヴァリアント/英国仕様)

とはいえ、フォルクスワーゲン・ゴルフR ヴァリアントは、クルマに求められる殆どのニーズへ応えつつ、完璧なパフォーマンス・ワゴンとして楽しめるという、類まれな高みにある。その能力は出色といえる。

先代より引き締められたシャシーは、荒れた路面での安定性や、乗り心地を少し犠牲にしている。そのかわり滑らかな路面に進めば、優れたグリップ力と操縦性を獲得していることが見えてくる。結果として、最新のゴルフR ヴァリアントの総合力は高いままだ。

試乗で頻繁に用いるルートでは、流暢さや安楽さが薄まっていた。しかし、意欲的なドライバーの気持ちには、一層応えられるようにもなっていた。個性はわずかに変化したといえるが、魅力的なステーションワゴンであることに変わりはない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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