かつてないスピードとサウンド ポルシェ718ケイマン GT4 RSへ試乗 部分的に下剋上 後編

公開 : 2022.03.25 08:26

遂に911 GT3用フラット6を獲得。過去最高のドラマチックさを味わえる至高の718ケイマンを、英国編集部が確かめました。

車重はケイマン GT4より35kg軽い1415kg

ポルシェ718ケイマン GT4 RSのスプリングレートは、通常の718ケイマン GT4比でフロントが66%、リアが40%も硬い。トレッドがフロントは6mm、リアは8mm広いため、実際の硬さはそこまで増えてはいない。テコの原理と同様だ。

さらに、専用設定のPASMダンパーと調整式アンチロールバーが搭載される。キャンバー角とトー角を、お好みに調整できる。

ポルシェ718ケイマン GT4 RS(欧州仕様)
ポルシェ718ケイマン GT4 RS(欧州仕様)

ブレーキは、アップグレードされたスチール製ディスクが標準。ホイールは、鍛造アルミニウムの専用品。軽量なマグネシウム製ホイールと、カーボンセラミック・ブレーキもオプションで用意された。

ボディにはエアロパーツが付加され、通常のケイマンと異なることは一目瞭然。NACAダクトの空いたボンネットと、エアアウトレットが切られたフロントフェンダーは軽量なカーボン製。ブレーキを効果的に冷やしてくれる。

スワンネックのステーが支持するリアウイングは、911 GT3と同じもの。フロントスプリッターの効果と合わせて、718ケイマン GT4より25%多いダウンフォースを生成するという。

ガラスは軽量なものに置換され、ドアの内張りやカーペットからも重さが削られた。その結果、車重はPDKのGT4より35kg軽い、1415kgを実現している。

カーボンセラミック・ブレーキとマグネシウム・ホイールを装備し、インフォテイメント・システムを省けば、1400kgを切る可能性が高い。必要なら、ロールケージもマグネシウム製を組める。

718ケイマン GT4 RSと同等の車重だったポルシェは、2011年の997型911 GT3 RS 4.0までさかのぼる。最高出力は、偶然にも500psだった。

神がかり的なドライビング体験

いよいよ発進させてみよう。いわずもがな、公道でもサーキットでも、すこぶる速い。ショートレシオ化された7速PDKは、稲妻のように鋭く回るフラット6と見事に息を合わせる。身のこなしも極めて軽い。

本域の加速力を引き出すには、911 GT3と同様に、回転数を高める必要がある。その上昇とともに、アグレッシブさも増長していく。前例のないような音響体験と組み合わされば、6500rpm以上でのフルスロットルは、まさに神がかり的な体験だ。

ポルシェ718ケイマン GT4 RS(欧州仕様)
ポルシェ718ケイマン GT4 RS(欧州仕様)

ただし、ボリュームも相当に大きい。サーキット走行では、耳栓をした方が無難かもしれない。

姿勢制御も秀抜。乗り心地も、よほど荒れた路面を除いて、我慢を強いるほどではない。ハードコアな911 GT3を知っていると、朗報だろう。過度に身体が揺さぶられることなく、操縦に大きな筋力も必要としない。

操舵感は、美しいとさえ感じるほどリニア。ステアリングホイールは重すぎず、情報が豊かに手のひらへ伝わってくる。

引き締められたサスペンションは、718ケイマン GT4よりボディロールが小さい。グリップ力が限界を迎えるまで、コーナリング時の安定性は極めて高い。より高速での旋回を試したいと、思わせてくれる。

限界を超えた領域での、懐が深い扱いやすさという点では、標準の718ケイマンよりやや劣る。グリップ力が極めて高く、より攻め立てた運転の難易度も上昇している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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