かつてないスピードとサウンド ポルシェ718ケイマン GT4 RSへ試乗 部分的に下剋上 前編

公開 : 2022.03.25 08:25  更新 : 2022.08.08 07:13

遂に911 GT3用フラット6を獲得。過去最高のドラマチックさを味わえる至高の718ケイマンを、英国編集部が確かめました。

超高回転型4.0Lフラット6をケイマンに

ポルシェが初代ケイマンを発売してから、17年が経過する。一部のドライバーが感じていたとおり、まだ完全な高みには到達していなかったようだ。

小さなミドシップ・クーペのシャシーが備える、能力の高さには多くの人が唸らされてきた。同時に、よりパワフルなエンジンとシャープな性格付けが与えられれば、一層の訴求力を得るだろうと想像した人も多かった。

ポルシェ718ケイマン GT4 RS(欧州仕様)
ポルシェ718ケイマン GT4 RS(欧州仕様)

先輩格、ポルシェ911 GT3をも凌駕する可能性を秘めているのでは、と思わせるほど。下克上を許さないため、モデル戦略としてケイマンの能力が抑えられていると考えたのは、筆者だけではないだろう。

しかし、ポルシェの管理職に新メンバーが加わり、状況は変わったらしい。このケイマンGT4 RSの量産が認められ、2022年の春に英国市場にも導入されることになった。

コンセプトは至ってシンプル。911 GT3用の超高回転型フラット6を、強化した718ケイマンへ搭載するというもの。

何年にも渡って、ディーラーを通じて寄せられていた要望を、ポルシェは受け流し続けてきた。歴史あるスポーツカー・ブランドにとっては、悩ましい判断だったのかもしれない。

販売すれば、欲しがる人が少なくないことは明らかだった。安くない価格だとしても、見事なクルマが生まれる見通しは高い。

そして彼らは、遂に実行した。過去に例がないほど素晴らしく、生々しいスポーツカーが誕生した。世界中のどこを探しても、どの価格帯へ広げても、比較できるようなモデルは存在しないといっていい。それが、この718ケイマン GT4 RSだ。

ある領域では992型911 GT3を凌駕

718ケイマン GT4 RSは、通常のケイマンとは異次元のダイナミックさを獲得している。鋭い加速力と、シリアスな敏捷性を兼ね備えている。過去の量産エンジンとして、最高の音響体験も与えてくれる。

最新の992型911 GT3を凌駕するだろうか。すべてではないにしろ、ある領域では、それを叶えている。

ポルシェ718ケイマン GT4 RS(欧州仕様)
ポルシェ718ケイマン GT4 RS(欧州仕様)

サウンドを聞き比べれば、718ケイマン GT4 RSの方が素晴らしい。ミドシップ・レイアウトが生むシャシーのバランスや素直さでも、上回っている。幾つかの点で、間違いなく勝っている。わたしたちの予想は、正解だった。

同時に、911 GT3の立場が危うくなったわけでもない。タイヤの接地面積が広く、駆動系の仕様も特化しているため、ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェをより短時間に周回できる。高速域での安定性も高い。

718ケイマン GT4 RSには、モデル初となるミシュラン・カップ2Rタイヤが組まれている。公道走行が許される、超ハイグリップなゴムだ。有能なエンジンが生み出す豊満なトルクを、リアタイヤを介して路面へ伝えることを可能としている。

一部のハイグレードなケイマンも、確かに高次元の能力を獲得していた。しかし、タイヤスモークを躊躇せず巻き上げるような、過激なマシンに感じさせた例はなかった。

さて、メカニズムを確認していこう。エンジンは、従来のケイマン GT4に載っていた最高出力420psの4.0L水平対向6気筒ではなく、992型911 GT3が積む4.0L水平対向6気筒。同じ4.0Lだが、まったく異なるユニットだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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