名機4A-GEに軽いFRシャシー 若者も吸い寄せるAE86 トヨタ・カローラ・レビン 前編

公開 : 2022.05.14 07:05  更新 : 2022.08.08 07:11

軽量なFRシャシーに4A-GE型エンジン

カローラ・レビンは、細いヘッドライトへつながるくさび形のフロントノーズに、端正に傾斜したファストバック・シルエットを備えた、紛れもないクーペだ。スタイリングに派手さはないが、端的にスポーツカーが表現されている。

ターボチャージャーやスーパーチャージャーといった、過給器は載っていない。自然吸気の1.6エンジンに、5速のマニュアル・トランスミッションが組み合わされ、当時としては一般的だったフロントエンジン・リアドライブ(FR)のシャシーを持つ。

トヨタ・カローラ・レビン(AE86/1983〜1987年/英国仕様)
トヨタ・カローラ・レビン(AE86/1983〜1987年/英国仕様)

しかし一度ムチを入れれば、普通の組み合わせが、それ以上の輝きを放ち出す。車重は軽く、日本仕様の2ドアボディなら900kgしかない。直列4気筒エンジンの重さは、しっかりしたデフとアクスルが相殺。前後の重量バランスは理想に近いものだった。

フロントサスペンションは、フロントがマクファーソンストラットで、リアがリジッドアクスルの4リンク。前後ともに、コイルスプリングとディスクブレーキが組まれている。

さらにAE86を際立たせていたのが、1587ccのダブル・オーバーヘッド・カム(DOHC)エンジン。4A-GE型と呼ばれるユニットで、シャシーとのベストマッチングを披露した。特別なモデルにした立役者といえる。

この4A-GE型ユニットは、当時のトヨタが新しく設計したもので、1983年に発売されたAE86から導入が始まった。驚くほど軽量でありながら、充分パワフルだったことが最大の特徴。英国仕様では、自然吸気で125psを発揮した。

当時のトヨタ車らしいインテリア

バルブアングルが広く、インテークポートが大きく、レッドラインは7800rpm。高回転型ユニットの傑作の1機として数えられる。

加えて、トヨタ・バリアブル・インダクション・システム(T-VIS)を採用。デュアル・インテークに備わるバタフライバルブを4200rpmで切り替え、エンジンの回転数に合わせてトルクとパワーを最大化するよう、吸気量を調整していた。

トヨタ・カローラ・レビン(AE86/1983〜1987年/英国仕様)
トヨタ・カローラ・レビン(AE86/1983〜1987年/英国仕様)

お借りしたシルバーとブラックのカローラ・レビンは、ノーマルに近い。だが、綺麗に曲げられたエグゾースト・マニフォールドと、抜けの良いスポーツ・エグゾーストが組まれ、甘美なサウンドを放つ。

走行距離は7万2000kmを超えたばかり。キーをひねると、1.6LのDOHCエンジンは一発で始動した。心地良い音響が周囲を包む。

近隣の睡眠を邪魔しないように、そっと路地を出発する。ドライバーズシートは快適。数分もかからず、カローラ・レビンへ身体が馴染む。

ブルーのクロス張りシートに、プラスティック製であることを隠さないブラックのダッシュボード。いかにも当時のトヨタ車らしいが、ヘッドライト・スイッチを包むメーターパネルの照度調整ダイヤルなど、気の利いた機能も点在している。

夜の暗がりに合わせて、メーターの明るさを絞る。8000rpmまで振られたタコメーターと、時速140マイル(225km/h)まで振られたスピードメーターは、大きく見やすい。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・マクレマン

    Greg Macleman

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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