スポーティという言葉が似合う フォルクスワーゲンID. 5 GTXへ試乗 299psの四輪駆動

公開 : 2022.05.29 08:25  更新 : 2022.05.30 19:05

欧州で販売が始まっている純EV、ID.4のクーペ版となるID.5。スポーティなGTXを英国編集部が評価しました。

充実装備にスポーティな走りのGTX

確かに運転席周辺やボディの前半、シャシー構成などにフォーカスを当てるなら、2021年のフォルクスワーゲンID. 4と目立った違いはない。それでも、ID. 5にも触れるべき部分は少なくない。

ID. 5の基礎骨格となるプラットフォームは、ID. 4と同じMEB EVアーキテクチャ。後輪駆動と四輪駆動が選べるパワートレインが用意され、動力性能や航続距離も基本的には同じだ。

フォルクスワーゲンID. 5 GTX(欧州仕様)
フォルクスワーゲンID. 5 GTX(欧州仕様)

しかし、クーペ風シルエットとするべく、ルーフラインはボディ後半でなだらかに傾斜している。欧州で売られるID.ブランドとしては3台目、フォルクスワーゲンとしては9種類目のSUVとして、独立したモデルという位置づけにある。

パワートレインのラインナップは、後輪駆動のシングルモーター仕様が、174psと203psという2種類。さらに、今回試乗した四輪駆動のツインモーター、GTXも選べる。こちらは総合で299psを発揮し、0-100km/h加速6.3秒という俊足を誇る。

駆動用バッテリーの容量は、77kWhが標準。航続距離は仕様によって異なるが、489kmから519kmの間がうたわれる。ボディの四角いID. 4と比べると僅かに長い。

フォルクスワーゲンの高性能バージョンといえば、GTIを思い浮かべる読者が多いと思うが、純EVのID.ブランドでも同等の展開がされている。ID. 5のGTXは、ゴルフのGTEやGTDといったバリエーションに並ぶものと考えていい。

つまり、装備が充実していて、見た目がスポーティ。標準のID. 5よりパワフルに仕立ててあり、コーナリング性能も高い。

驚くほど速く、機敏に走れるシャシー特性

実際、ID. 5 GTXは想像以上に速い。パワーウエイトレシオは138ps/tと、活発なハッチバックと同等なことを考えると驚くほど。その理由は、駆動用モーターの特性にある。

最大のパワーを瞬間的に発進直後から生成し、速度の上昇とともに徐々に勢いが弱まっていく。シートへ背中が押し付けられるほどではないが、後輪駆動のID. 5と比較すると、直線加速は見違えて鋭い。スポーティという言葉がよく似合う。

フォルクスワーゲンID. 5 GTX(欧州仕様)
フォルクスワーゲンID. 5 GTX(欧州仕様)

コーナーでの足取りも安定している。ステアリングホイールは、手に伝わる感覚や情報量が乏しいものの、磨かれた精度がそれを補う。反応が常に予想しやすく、速めの侵入速度でも自信が揺らぐことはない。

重さのある駆動用バッテリーがフロアに敷き詰められ、重心が低く、前後の重量配分も良好。GTXには専用サスペンションが組まれ、車高は15mm低い。

ボディロールは巧みに抑えられており、小気味よくフロントノーズが反応する。操舵に対する反応もクイックで、コーナーからの脱出加速も機敏だ。

通常はリアの駆動用モーターが主に仕事をする四輪駆動システムに加えて、旋回性を高めるトルクベクタリング機能も搭載する。ドライバーを中心にボディが回転していくような感覚があり、運転の楽しさを高めている。

一方で穏やかに走っている限り、扱いやすく快適。高く評価したい特性だといえる。

慣れが必要だと思ったのが、感触に乏しいブレーキペダル。それでも効果的に運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、航続距離を伸ばしてくれる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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