BMC特有の不思議な魅力 直列6気筒のオースチン3リッターとウーズレー・シックス 後編

公開 : 2022.06.11 07:06

ブランド苦難の時代に誕生した上級サルーン。直6エンジンを搭載した2モデルを、英国編集部が振り返ります。

短いボンネットに直6を横向きで搭載

オースチン2200とウーズレー・シックスは、スタイリング的にはオースチン1800のマイナーチェンジ版、Mk IIIと変わらなかった。だが、短いボンネットにはE6型と呼ばれる直列6気筒エンジンが横向きに搭載されていた。

エンジンのベースは、オースチン・マキシ1500用の4気筒。通常の1800と同じトランスミッションを介し、前輪を駆動した。オーバーヘッド・カムを採用し、重量は4気筒のBシリーズ・ユニットより約9kg重い程度。最高出力は107ps以上がうたわれた。

ダークグリーンのオースチン3リッターと、ダークブルーのウーズレー・シックス
ダークグリーンのオースチン3リッターと、ダークブルーのウーズレー・シックス

ラジエターは、サイドマウントの1800とは異なりフロントグリルの後ろ。制動力の高いディスクブレーキがフロントに組まれ、約56Lの大きなガソリンタンクも装備された。

既に1800の量産化から8年が経過していたが、手が加えられた範囲は最小限。それでも、1975年までに4万台以上が製造され、その半数以上がオースチン2200ではなく、ウーズレー・シックスだった。ブランドの人気を裏付けたといえた。

盾のカタチのフロントグリルに、ノスタルジックなエンブレムがあしらわれ、見た目の雰囲気はウーズレーらしい。シンプルさが、攻撃的なフロントマスクを持つ2022年の交通のなかで、優雅に映える。

一方、オースチン3リッターの顔つきは、ウーズレーほど気高く見えないが、主張は負けじと強い。美しいとまでは感じないものの、独特な風格がある。

クロームメッキで飾られた大きなフロントグリルは、大人しくまとめられたリアまわりと対照的でもある。読者はウーズレーとオースチン、どちらがお好みだろう。

ゆったりしたリアシートは2台の特長

ボディ後端の荷室は、全長が長いだけあって3リッターの方が遥かに広い。車内も広々としており、丁寧に仕立てられたフロントシートへ座ると、視界も優れる。ゆったりとしたリアシート側の空間は、2台に共通する特長だろう。

フロントシートの間には、折りたためるアームレストが備わっている。BMC社の元社員だったという、ロバート・ギャロウェイ氏がオーナーのシックスは、シートがナイロン素材のクロス。初期型でドアにはウッドパネルもなく、大衆的な内装に感じられる。

オースチン3リッター(1967〜1971年/英国仕様)
オースチン3リッター(1967〜1971年/英国仕様)

他方、3リッターのカーペットは上質で、天井の内張りはウェスト・オブ・イングランド社製の布地が用いられている。シートは合皮で覆われているものの、ダッシュボードにはウッドもふんだんに施され、バンデンプラ仕様のモデルへ近い高級感がある。

スピードメーターは横に長いリボンタイプ。大径のステアリングホイールは、シックスよりも起き気味だ。

シフトレバーのレイアウトも興味深い。3リッターはトランスミッション・トンネル上に載った、クロームメッキされたゲートから伸びている。シックスでは、ダッシュボード右端の溝から水平に伸びている。

正直、どちらも扱いにくい。フロアから立ち上がった方は硬く、正面右手から突き出た方は感触が曖昧で選びにくい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ウィル・ウイリアムズ

    Will Williams

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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