V8 620psのフェラーリ・ローマでグランドツアー ル・マン-ロンドン長距離試乗 前編

公開 : 2022.08.14 08:25

あまりにも素晴らしいV8のサウンド

2022年のル・マン24時間レースが始まる前日に、フェラーリ・ローマのカギを預かった。サルト・サーキットへ立ち寄り、壮麗な夕景を味わいながら年に1度の世界的イベントの雰囲気に浸る。

サーキットから郊外へ伸びる道は、予想通り渋滞していた。スマートフォンを片手にした若者にせがまれて、空ぶかしを何度か披露してしまった。

フェラーリ・ローマ(英国仕様)
フェラーリ・ローマ(英国仕様)

マラネロ製のV8エンジンは、あまりにも素晴らしいサウンドを響かせる。多くの現代モデルが電動化され、静まり返っている。フェラーリに乗っているクルマ好きとして、周囲を楽しませることは半ば義務のように思う。

翌日の午後、いよいよ24時間レースがスタート。トヨタのハイブリッド・ハイパーカーが勢いよく飛び出していく。空は快晴で、殆ど雲はない。気温は30度以上。ゴールまでは残り23時間以上ある。

来年はポルシェプジョー、フェラーリといった名門チームがル・マンに帰ってくる。トヨタの独走状態が破られ、スリリングなレース展開が繰り広げられるだろう。

この24時間レースで筆者が楽しみにしているものが、闇夜を疾走するマシンたち。トップクラスのスポーツカーが、2灯のヘッドライトを揺らしながら高速で駆け抜ける。ほかでは見られない光景なのだが、まだ日没まで6時間もある。

ローマのカギを手にしている筆者は、それまで少し離れた街を目指すことにした。優れたグランドツアラーなら普段より遠い場所までドライブし、優雅に夕食へ舌鼓を打てる。

親しみやすく感触豊かで、存分に楽しめる

今回はル・マンの南、ロワール川のほとりにあるアンボアーズの街へ向かう。片道112km。田園地帯に続く一般道を走れば、サーキットの割高なハンバーガーやフライドポテト以外の食べ物にありつける。ナイト・スティントにも、余裕で間に合うはず。

サーキットを出ると、24時間レースの喧騒から一転。森や広大な畑を左右に見ながら、悪くないペースで運転できる。ステアリングホイール上のマネッティーノ・ダイヤルを回し、ドライブモードをコンフォートからスポーツに変える。

フェラーリ・ローマ(英国仕様)
フェラーリ・ローマ(英国仕様)

すべてのレスポンスがシャープになり、加速も鋭くなるが、それでも驚異に感じるほどではない。8速デュアルクラッチATがスパスパと変速を繰り返し、低く唸るようなサウンドが車内に充満する。

アンボアーズまでの道は、基本的にストレートが中心。時々出くわす鋭いコーナーでは、充分なグリップ力を活かしフロントが機敏に切り込んでいく。

フランスは、郊外の一般道なら制限速度は90km/h。その範囲内でも、アクセルペダルの加減でラインを調整できる。軽くリアタイヤを外側へ振り出すことも難しくない。

ミドシップ・リアドライブのフェラーリの方が、よりシャープではある。ドライバーとの関わりが濃く、自由度も高いだろう。とはいえフロントエンジン・リアドライブのローマも、親しみやすく感触豊か。最高な土曜の夜だ。

爽快な笑みを浮かべたまま、アンボアーズに到着。お腹を満たし、数時間後に再びローマのステアリングホイールを握った。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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