ハイウェイの145kmを全力疾走 自作のロータス・カールトン 平均記録は264km/h 後編

公開 : 2022.10.16 07:06

アクセル全開なら3速でもホイールスピン

エリスは、2001年のオープンロード・チャレンジも完走。2000年に優勝したシボレーコルベットと、1937年式フォードF-1ピックアップ・トラックに次ぐ3位だった。

「記録はあまり意識していませんでしたが、追い風が吹いて素晴らしい走りでした。平均では時速164マイル(約264km/h)。翌年のアンリミテッド・クラスへの出場権を得たんです。しかし、9.11同時多発テロが勃発。結婚もして、それが最後となりました」

ジョー・エリス氏が仕上げたヴォグゾール(オペル)・オメガがベースのロータス・カールトン(2000年)
ジョー・エリス氏が仕上げたヴォグゾールオペル)・オメガがベースのロータス・カールトン(2000年)

真っ白なロータス・カールトンはネバダ州を疾走するように、今も英国各地の自動車イベントへ出向いては、その勇姿を多くの人へ披露している。最高速度を追い求めるように、意欲的にエンジンは雄叫びを上げている。

グレートブリテン島の中南部、ターウェストン飛行場にお招きした今回も同様。エリスが滑走路でアクセルペダルを踏み込むと、4速のまま160km/hから猛然と加速していく。

彼によれば、アクセルペダルを全開にすれば3速でもホイールスピンするという。実際、回転数を問わずパワーがみなぎる。

「最も効果的に走るため、オープンロード・チャレンジでは5速で6500rpmを保って走りました。6速はオーバードライブ過ぎて、逆に勢いが落ちます。下り坂では、6速に入れて回転数を下げて温存しながら280km/hを保てましたが、トルクが足りません」

もう一度挑戦したい気持ちが湧いてくる

今回は、5速に入れて少し加速した程度でストレートが終わる。「225km/h位に届いただけですね」。と、ヘルメットを被ったエリスが微笑みながら口にする。それからフルブレーキングで停止。焼けた匂いが周囲に漂う。

これまでの経験から、エリスは表向きにはネバダ州へ戻ることはないと話している。しかし、息子のエドにはもう一度走りたいと口にしているという。

ジョー・エリス氏が仕上げたヴォグゾール(オペル)・オメガがベースのロータス・カールトン(2000年)
ジョー・エリス氏が仕上げたヴォグゾール(オペル)・オメガがベースのロータス・カールトン(2000年)

クラッシュへの恐怖や、ロータス・カールトンをスクラップにする可能性が、彼の気持ちを止める理由にはならない。「このクルマへ乗る度に、太陽で照らされる感覚や燃料の匂い、漂う熱を感じ、あの時の記憶が蘇ってくるんですよ」

「ゴール時には、ドーパミンが溢れて気持ちが高揚するんです。中毒性があるんですね。もう一度挑戦したいという気持ちが湧いてきます。馬鹿げた妄想も」

「カールトンをさらにチューニングして250psパワーアップさせれば、時速200マイル(約321km/h)も可能でしょう。そこまでするべきか、悩むところではありますが」

「ハリウッド映画のキャノンボールに、大きな影響を受けてきました。砂漠を貫くハイウェイを全開で疾走する姿に、想像力が掻き立てられます。最近は、再び気持ちがうずいて仕方ないんですよ」

協力:アガメムノン社、ターウェストン飛行場

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジャック・フィリップス

    Jack Phillips

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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