EV24時間チャレンジ ポルシェ・タイカンで行く欧州14か国弾丸ツアー オランダ−セルビア1900km

公開 : 2022.10.22 20:25

オランダからセルビアまで24時間で走破。英国編集部の面々にとっては、不可能でもなんでもないスケジュールのようですが、はたしてそれはEVでも可能なのでしょうか。ニール・ウィンがポルシェ・タイカンで試してみました。

24時間で13か国はどうでしょう?

1本の線。それがわれわれの成否を左右するすべてだ。ここはオランダのアイスデン。ベルギーとの国境にほど近い地で共に過ごしている旅の相棒は、静かなポルシェタイカンだ。

これから先、ゴールまでの道のりは1800kmほど。さらに11の国境を24時間以内に走り切らなければならない。少なくとも理論上は、最初の国境越えはシンプルなタスクだが、それは24時間で13か国を巡る、EVでのチャレンジのスタートでもある。一昼夜まるまるかかるが、ハイライトは国境を越える12の瞬間ということになる。

当初の予定したルートは、13か国を通るものだったが、途中で1か国追加することにした。それが思わぬトラブルを招くことになる。
当初の予定したルートは、13か国を通るものだったが、途中で1か国追加することにした。それが思わぬトラブルを招くことになる。    JOHN BRADSHAW

この旅の前提はシンプルだ。欧州本土の可能な限り多くの国を、タイカンに乗り1日でめぐることで、EVの開発がどこまで進んでいて、公共の急速充電インフラがどれくらい整備されているのかを知る機会にしよう、というもの。航続距離と充電の心配を、まるっとまとめて検証するわけだ。

少し前なら、この手の実験的試みができるのはテスラだけで、その一因は広く整備が進んでいる独自の充電ネットワーク、スーパーチャージャーにあった。しかし、ここ数年で、BMWフォードフォルクスワーゲンヒョンデによる合弁会社のイオニティが、欧州で350kW充電ステーションの稼働をはじめている。その立地が、もっとも交通量の多い主要道路沿いに集中しているので、ルート沿いにあった6つのチャージ地点は驚くほど見つけやすかったし、大幅な回り道を必要とするところはひとつもなかった。

6度も充電していたら、さぞかしロスタイムが多かろうとお思いかもしれない。しかしタイカンは最大270kWチャージングに対応するので、10〜80%の補充に要するのは20分程度。コーヒー休憩にちょうどいいくらいの時間しかかからない。

出発前、高速道路の速度域で509kmというタイカンの公称航続距離に、われわれは疑いの目を向けていた。ところが数時間走ると明らかになったのは、トリップコンピューターの予想航続距離が、ほぼ走った分ずつ減っていることだった。

オランダからベルギー、ルクセンブルク、フランスへ

うれしいことに、出発地点の駐車場から最初の国境越えまでは5分とかからなかった。時刻は午後4時3分。そこからはクルーズコントロールを法定速度の120kmに設定し、3つめの国となるルクセンブルクへ気楽なクルーズと洒落込んだ。一路、南へ。

ルクセンブルクの国土は、ベルギーの10分の1程度。しかし、この裕福な国で働く労働者たちの帰宅ラッシュに巻き込まれ、予期せぬ渋滞で20分ほど無駄に過ごしてしまった。致命的とは言わないが、理想的なスケジュールとも言えない。さらに悪いことに、フランスのオーコンクールで最初に立ち寄った充電スポットは、ひどく混み合っていた。

路上の渋滞はだけではなく、給油より長引く充電スタンドの順番待ちも想定しなくてはならないのが、EVの現状だ。
路上の渋滞はだけではなく、給油より長引く充電スタンドの順番待ちも想定しなくてはならないのが、EVの現状だ。    JOHN BRADSHAW

われわれはどうにか空いていた最後の充電器を押さえたが、われわれ以外にも同時に5台がチャージしていたため、充電量は最大70kWちょっとにとどまった。結果、75%まで補充するのに45分以上かかってしまった。

これ以上は時間のロスが大きいと判断し、充電を切り上げたわれわれは、もっと速く走れる道と、もっと早くチャージできる充電スタンドを求め、ドイツへと向かうことにした。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ニール・ウィン

    Neil Winn

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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