現代に通じるパッケージ アウディS3(初代/8L型) 英国版中古車ガイド 四駆ホットハッチの元祖

公開 : 2023.02.08 08:25

今に続く四輪駆動ホットハッチの先駆けとなった、S3。英国編集部が初代の魅力を振り返ります。

四輪駆動に4気筒ターボエンジン

初代アウディS3は、時代を先取りした存在だった。現代のハイエンド・ホットハッチといえば、四輪駆動に4気筒ターボエンジンが定石。その両者を小さなボディに詰め込んだS3は、1999年にリリースされている。

先進的といえたパッケージングだが、20年前のモデルだということは隠さない。直感的なシフトフィールがうれしいマニュアルは、従来より1段多い6速ながら、当時のターボエンジンらしく明確なラグもある。

アウディS3(初代/8L型/1999〜2003年/英国仕様)
アウディS3(初代/8L型/1999〜2003年/英国仕様)

もっとも、ブーストが高まりパワーの波に乗る感じは、病みつきになるのだが。タービンの甲高い響きも悪くない。

初代アウディS3が搭載したエンジンは、1.8Lの4気筒20バルブ・ガソリンターボ。2001年までの最高出力は210psを誇り、それ以降、モデルチェンジされる2003年までは同じユニットながら225psへ増強されている。

アウディの高性能モデルとして、駆動方式は四輪駆動。一般的にクワトロと呼ばれているが、S3はフォルクスワーゲン・グループで共通して採用されていた、ハルデックス方式を積んでいる。

通常の走行時は前輪駆動で、フロントタイヤだけでは約不足な時にリアタイヤへもパワーが伝達される。燃費を向上させつつ、大きなパワーを効率的に路面へ展開することを可能としている。履いているタイヤが、ちゃんとした状態なら。

0-100km/h加速は6.6秒。現代でも不足ないダッシュ力を披露する。

ドライバーの興奮を誘うブースト圧の高まり

ちなみに、今回ご登場願ったダークグリーンのS3は、ドイツのチューニングガレージ、MTM社によるアップグレードを受けている。専用ECUで最高出力は250psを得ており、0-100km/h加速は6.0秒へ縮めているという。

ノーマルのS3でも、中回転域でのブースト圧の高まりはドライバーの興奮を誘う。ターボが本領を発揮すると、高まるエンジンサウンドに合わせて、爽快な勢いで路上を突き進みだす。

アウディS3(初代/8L型/1999〜2003年/英国仕様)
アウディS3(初代/8L型/1999〜2003年/英国仕様)

S3の車重は軽いとはいえず、ステアリングホイールの操舵感も重め。それでも高速でコーナーへ侵入すると、鋭敏とまではいえないまでも、充足感のある回頭性を楽しめる。

限界領域へ迫ると、コーナー外側のリヤタイヤが出口に向けてパワーを展開している感覚を掴めるはず。クワトロの効果だ。

サスペンションは、ホットハッチとして硬すぎることはない。郊外の道を意欲的なスピードで走るのに、適正なセットアップといえるだろう。それでいて、高速道路を淡々と快適にも移動できる。上級ブランドのコンパクトモデルらしく。

インテリアには高級感が漂う。製造品質は高く、素材の質感も悪くない。ダッシュボードの装備は20年以上前のクルマなことを実感させるものの、車内から受ける印象は変わらず良好。居心地がいい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    オリバー・ヤング

    Oliver Young 

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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