新型「GLC」、ディーゼルの走りを検証 メルセデス・ベンツの人気SUV、どう変わった?

公開 : 2023.03.16 12:04  更新 : 2023.03.24 17:05

日本発売された「メルセデス・ベンツGLC」の新型。ディーゼル仕様(820万円)を試乗しました。内装の出来、マイルドHVの走りを分析しましょう。

GLC 220 d」がフルモデルチェンジ

ファーストカーの基本となるファミリー&レジャー用途は一昔前ならセダンかワゴンだが、現在はSUVかミニバンだろう。

SUVは流行りモノでもなければ際物でもなく、実用の基本型。そこをしっかりと押さえているのがFMCし、2代目となった「GLC」である。

メルセデス・ベンツGLC 220 d 4マティック(ハイテックシルバー/AMGラインパッケージ装着車)
メルセデス・ベンツGLC 220 d 4マティック(ハイテックシルバー/AMGラインパッケージ装着車)    宮澤佳久

GLCクラスはベンツ車の命名則から分かるとおりCクラスをベースに開発された乗用車プラットフォームのSUVであり、縦置(FR)プラットフォームを採用。

車体サイズは先代に対してホイールベースと全長を拡大しているが、プロポーションやスタイルの方向性に大きな変化はない。見た目の印象も「使えるSUV」である。

日本導入モデルは、現時点では2Lディーゼルを搭載する「220 d」の4WD仕様のみ。

新型GLCにはPHEV仕様など多彩なパワートレインが展開され、「220 d」は性能的にはエントリーモデルに近い設定である。

高性能やスポーティなどのプレミアム軸の価値感ならともかく、個人的にはGLCのコンセプトに最も忠実と理解している。前述の「実用の基本型」どおりのモデルと言えよう。

2Lディーゼル どんな印象?

試乗車は「AMGライン」を装着し、同仕様にOP設定されている電子制御エアサスのエアマティックを装備している。

OP総額は200万円近く、OP含む車両価格は1000万円を超える。

GLC 220 d 4マティック(ハイテックシルバー)
GLC 220 d 4マティック(ハイテックシルバー)    宮澤佳久

搭載される2Lディーゼルは、先代からストローク増により若干の排気量アップ。

パワースペックは197ps/44.9kg-m。ガソリンNA仕様なら最高出力は2L級、最大トルクは5L級。試乗しても大トルクのほうが印象に残った。

全開で加速させても刺激的な加速は得られない。ただ、車重や速度を無視するように力強く加速する。

回転計でのレブリミットは4400rpmに刻まれているが、全開加速でもレブリミットに貼り付けるような変速は行わない。早めのアップシフトで幅広い回転域を伸びやかに使う。

そのせいか許容回転数の低いディーゼルながら頭打ち感が少なく、滑らかさと力強さを両立。瞬発力とか小気味よさでは分が悪いが、ディーゼルらしい大トルクを上手に活かしたドライバーにも同乗者にも優しいパワーフィールである。

マイルドハイブリッドについて

なお、このパワートレインはエンジン/ミッション間に最高出力17kWのISG(電動モーター)を備えたマイルドハイブリッドを採用。

停車前エンジン停止とアイドリングストップに「らしさ」を意識するが、殊更な電動感の演出はない。

「オフロード」モードでは車高を約15mm上げ、「スポーツ」モードでは約15mm下げる。
「オフロード」モードでは車高を約15mm上げ、「スポーツ」モードでは約15mm下げる。    宮澤佳久

もちろん、緩加速や加速の補助、とくに初期加速の立ち上がりの滑らかさは電動アシストによる部分も大きいのだろうが、運転で感じるのは“扱いやすさ”。

ドライバーの感性との馴染みよさが印象的だった。

エアマティックは車高の調整も可能であり、高速域では車高低下、悪路ではモード切替により車高増加ができる。

フロントノーズ下路面を映し出すモニターや車体傾斜等々の車両情報表示といった運転支援も加えて、悪路対応力は新型GLCのセールスポイントであり、そのグレードアップにエアマティックも相当貢献している。

ただ、電子制御サスの第一の長所は「操安性」と「乗り心地」の両立であり、GLCの“エアマティックの制御の巧みさ”の要点でもある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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