新体制下での第1弾 スマート#1 プレミアムへ試乗 高完成度な電動ハッチバック

公開 : 2023.06.01 07:05

適度な重みと安心感のあるステアリング

インテリアデザインは個性的。製造品質は高く、素材も上質だ。

小物入れが充実し、丸みを帯びたセンタートンネルは、最近のメルセデス・ベンツのそれに似ている。パールホワイトの化粧トリムは、標準装備のパノラミック・ガラスルーフと相まって、車内を明るくしている。

スマート#1 プレミアム(欧州仕様)
スマート#1 プレミアム(欧州仕様)

運転席の調整域は広いものの、身長の高いドライバーの場合、座面はもう少し長い方がしっくり来るだろう。リアシートも、スライドとリクライニングに対応する。空間にはゆとりがある。

荷室容量は313Lと、平均的な大きさ。荷室の床下には収納空間があり、フロントのボンネット内には充電ケーブルをしまうことができ、便利だ。

さて実際の走りだが、後輪駆動の#1は気持ちが晴れるようなドライバーズカーというわけではないものの、バランスが良い。ステアリングのレスポンスは速すぎず遅すぎず。手のひらへ伝わる感触は希薄ながら、適度な重み付けで安心感はある。

前回の試乗では、大きめのボディロールと不足気味のグリップを指摘しているが、どちらも改善した様子。タイヤはダンロップ・スポーツマックスを履いていた。

普段使いのハッチバックとして完成度は高い

サスペンションは、硬すぎず柔らかすぎず。路面からの入力を巧みに和らげ、細かな振動から車内を遠ざけている。強い負荷がかかると減衰力不足を匂わせるが、基本的に乗り心地は良い。

最高出力が271psもあるだけあって、#1はこのクラスでも活発な部類。クラスをリードするとまではいえないものの、運転は楽しい。

スマート#1 プレミアム(欧州仕様)
スマート#1 プレミアム(欧州仕様)

回生ブレーキにはスタンダードとストロング、eペダルという3モードが設定されている。スタンダードでも良く効くものの、ブレーキペダルを軽く傾けただけで制動力が立ち上がる様子。また、僅かに反応が遅れる印象もあった。

今回の試乗で示された電費は、5.6kmkWh。悪くないエネルギー効率といえ、現実的に354km程度の航続距離を得られる計算になる。

従来のシティカーとはまったく異なるスタイリングで一新した、BEVのスマート#1。普段使いのハッチバックとして、完成度は高い。ブレーキペダルの感触には改善が必要だと思うが、車内空間にゆとりがあり、操縦性や乗り心地は良く、航続距離も充分長い。

このクラスのBEVでは価格もお手頃。今回は、充分な利益を得られるかもしれない。

スマート#1 プレミアム(欧州仕様)のスペック

英国価格:3万8950ポンド(約627万円)
全長:4270mm
全幅:1822mm
全高:1636mm
最高速度:180km/h
0-100km/h加速:6.7秒
航続距離:439km
電費:5.9km/kWh
CO2排出量:−g/km
車両重量:1725kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:62.0kWh(実容量)
急速充電能力:150kW
最高出力:271ps
最大トルク:34.7kg-m
ギアボックス:シングルスピード

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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