レトロデザイン採用の流れは「抗いがたい」 ルノー、社会を覆う「暗雲」を晴らす

公開 : 2023.08.17 06:05

次世代EV群にクラシックカーのようなレトロなデザインを採用するルノー。ノスタルジックな外観は無機質なライバルと差別化し、見る人を明るい気分にさせるとデザイナーは言います。

なぜ最新EVにレトロなデザインを採用するのか

ルノーは、次世代EVにレトロなデザインを採り入れることで、「無個性」で「冷たい」ライバルとの差別化を図っている。

ルノー・グループのルカ・デ・メオCEOは、2000年代にフィアットのトップとして500を復活させ、ルノー着任後すぐに「4」と「5」のコンセプトモデルを公開するなど、クラシックなデザインの採用に対して積極的だ。これを踏まえ、同社のデザイン責任者であるローレンス・ヴァン・デン・アッカー氏はAUTOCARに対し、この流れは「抗いがたい」ことだと語った。

ルノー5を忠実に復活させることは、電動化なしには不可能だったとヴァン・デン・アッカー氏は示唆する。
ルノー5を忠実に復活させることは、電動化なしには不可能だったとヴァン・デン・アッカー氏は示唆する。

「EVは少し無個性で、とても流動的で、とても冷たいものであるべきだという、言われなき期待があると思います。わたしは、EVが将来もっと豊かなものになることを願っていますし、当社はベストを尽くしています。ルノー5とルノー4は完全なEVですが、伝説的なアイコンになるでしょう。同時に、メガーヌと次期型シーニックは非常に現代的なクルマです」

ルノーの過去作を引用することは、「ルカ(・デ・メオCEO)のような人にとって、たまらないこと」だったとヴァン・デン・アッカー氏は述べている。

ルノー5は、デ・メオCEOの新戦略「Renaulution(ルノーリューション)」のマスコット的存在として2021年初頭にコンセプトモデルが発表された。現在、来年の発売に向けて開発後期段階のテストに入っている。

ルノー4は昨年のパリ・モーターショーでコンセプトモデルとして公開され、2025年にはショールームに並ぶ予定。

どちらも小型EV用の新しいCMF-BEVプラットフォームをベースにしている。

続くインタビューで、ヴァン・デン・アッカー氏は次のように述べている。

「2009年にルノーに入ったとき、『アルピーヌやルノー4はいつ作るのか』と尋ねられたんです。わたしは、『未来をデザインするために雇われたのであって、過去をデザインするために雇われたのではない』と答えました」

「でも皮肉かもしれませんが、世界中が不安に溢れ、右も左も暗雲に覆われている今、良き時代、ブランドが生きていた時代を語り、人々が持つポジティブな感情をかき立てるようなクルマを作るのは、良いことだとわたしは思います」

「『ああ、あれはわたしの最初のクルマ、ルノー5だ』とか、『叔母のルノー4で運転を習った』と言ってくれる人たちに会ったことがあります」

「このような良い思い出は蘇らせる価値があると思います。気持ちのいい製品であり、手に入れることは非常に稀です。これは他の誰にもできないカードなんです。英国でも、ルノー5はとても人気がありますよね? 人々が望むものを提供しない理由はないでしょう」

これまで4や5のようなレトロなデザインが出なかった主な理由は、オリジナルに忠実にパッケージングすることが内燃機関では不可能だったからだと、ヴァン・デン・アッカー氏は言う。

「もしルノー5が内燃エンジンを使っていたら、こんな鼻になっていたでしょう」と、彼は鼻を指し、ピノキオの真似をした。「そういう意味で、(EVへの移行は)非常にエキサイティングなことなのです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    英国編集部ビジネス担当記者。英ウィンチェスター大学で歴史を学び、20世紀の欧州におけるモビリティを専門に研究していた。2022年にAUTOCARに参加。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ。テレビゲームで自動車の運転を覚えた名古屋人。ひょんなことから脱サラし、自動車メディアで翻訳記事を書くことに。無鉄砲にも令和5年から【自動車ライター】を名乗る。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴとトマトとイクラが大好物。

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