メルセデスAMG SL 詳細データテスト 高めた走行性能 失われた洗練性 今後の改善と熟成に期待

公開 : 2023.08.05 20:25  更新 : 2023.08.22 22:56

AMGの管轄となった新生SLは、パフォーマンスとハンドリングのスポーティさが高まり、多少は快適性を犠牲にしたものの、高級GTとしては平均的レベルです。しかし、歴代SLの洗練度には遠く及ばず、改善が期待されます。

はじめに

メルセデスの耐久レールマシンであるW194は1952年、モータースポーツの世界に消えることのない足跡を残した。ル・マンに勝ち、ニュルブルクリンク・アイフェルレンネンも、メキシコのカレラ・パナメリカーナも制し、ミッレ・ミリアでは2位に入ったのだ。

ワークスでのレース活動はその1年きりだったが、アメリカのインポーターであるマックス・ホフマンが、メルセデスに市販バージョンの製作を働きかけた。そうして1954年に生まれたのが、ガルウイングで知られるW198型300SLだ。

テスト車:メルセデスAMG SL63 4マチック+プレミアムプラス
テスト車:メルセデスAMG SL63 4マチック+プレミアムプラス    JOHN BRADSHAW

その後は6世代を重ねたメルセデスSLだが、もっとも長い世代は18年も続いた。しかし、数十年を経て、その姿は大きく変わった。モータースポーツ由来のモデルから、ゆったりと流れるように走る、分厚いカーペットが敷かれた高級オープンの象徴へと移り変わっていったのだ。

ところが、メルセデスに言わせれば、SLはルーツに立ち戻るというのだ。最新世代のR232は、公式にはメルセデスAMGに籍を置くモデルとなった。設計と開発は、メルセデスの社内チューニング部門によるもので、全車がAMGのバッジを掲げる。そして、軽量化に加え、パフォーマンスやハンドリング、ドライバーへのフィードバックを高めるとともに、SLの利点に数えられるようになってきた日常使いでの利便性も引き上げた。

ということは、穏やかで控えめな、魔法のじゅうたんのようなメルセデスSLにはピリオドが打たれ、よりスポーティなレジェンドの継承者に生まれ変わったのだろうか。それを確かめるべく連れてきたのは、新生SLのトップエンドである63 4マチック+である。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

関連テーマ

おすすめ記事

 

メルセデスAMGの人気画像