軽く速く小さい世界クラス ホンダ・シビック 同期のルノー5 日仏で生まれた新たな魅力(2)

公開 : 2023.10.14 17:46  更新 : 2023.10.17 11:13

コンパクトカー・クラスの確立に貢献した日仏の2台 当時は最前線にいたルノー5 ホンダの成長を導いたシビック 英国編集部が振り返る

軽く速く小さい、世界クラスのクルマ

1969年にホンダが発売したサルーン、1300は充分な評価を得られなかった。空冷エンジンを積んでいたことが販売不振の一因となり、本田宗一郎氏が社長を辞任するきっかけを作ったともいわれている。

これを挽回するように、「軽く速く小さい、世界クラスのクルマ」の開発が1970年に始まる。N360やN600の後継モデルとして、シビックは世界市場での販売が目指された。

ホンダ・シビック 1200(1972〜79年/英国仕様)
ホンダ・シビック 1200(1972〜79年/英国仕様)

ホンダの技術者は、オーバーヘッドカムの1169ccエンジンをフロントに横置き。前後のサスペンションには、独立懸架式を採用した。小さなボディサイズは入り組んだ日本の都市部へ適合し、オートバイを販売するディーラーの店頭へ問題なく収まった。

日本での発売は1972年7月。当初はリアガラスが固定の2ドアのみだったが、9月に3ドアのハッチバックが追加されている。ホンダの上層部は、2ボックス・ボディは充分な人気を得られないのではないかと、当初は心配していたようだ。

それでも、シビックは1972年と1973年、1974年に日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞。北米でも販売され、モータートレンド誌は、1941年式リンカーン・コンチネンタルやジム・クラーク氏がドライブしたロータスのF1並みに重要なモデル、だと絶賛した。

驚くほど機敏に走る典型的なホンダ車

グレートブリテン島へのシビックの輸入が始まったのは、1973年。既にホンダN360やN600が導入され、ロンドン・モーターショーではS800が注目を集めたものの、まだ英国人にはバイクメーカーだという認識が強かった。

市民のクルマといえたシビックは、そんなイメージを塗り替えることになった。当時のAUTOCARは、「過去のホンダのデザインに、まったく影響を受けていません」。と紹介している。

ホンダ・シビック 1200(1972〜79年/英国仕様)
ホンダ・シビック 1200(1972〜79年/英国仕様)

1973年のシビックの価格は、2ドアで1029ポンドから。セミオートマティックのホンダマチックを搭載した、3ドアのデラックスは1239ポンドに設定された。

ところが英国では、モーリス・ミニ 1000が837ポンドで売られていた。ホンダも、価格が安くないことは認めた。だが、オクタン価の低いガソリンにも対応することが強みだった。ストラット式の独立懸架サスペンションのメリットも、前面にアピールされた。

今回のイエローのシビック・デラックスは、英国に現存する最古の初代だと考えられている。直近の25年間は、英国ホンダのヘリテージ部門が管理する特別な車両だ。

「典型的なホンダ車といえますね。驚くほど機敏に走ります。ステアリングにはパワーアシストがなく、若干重く感じられますが、とてもレスポンシブです」。メンテナンスを担当する、同社のジェイソン・ライダー氏が話す。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・ロバーツ

    Andrew Roberts

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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