まるで「地球外マシン」の才腕 マクラーレン750Sへ試乗 後継のハードルを上げる完成度

公開 : 2023.11.25 19:05

スーパーカーのコクピットとして素晴らしい

インテリアも、細部へ変更を受けている。カーボンファイバー製モノコックは720Sと同一で、コンポーネントが組まれるハードポイントに変わりはないため、基本的な印象は重なるけれど。

とはいえ、スーパーカーのコクピットとして素晴らしいことにも変わりはない。面構成や光の演出が巧みで、特別なクルマに乗っているという感覚を抱かせる。ドライバーとエンジンとの結び付きを強めるため、エンジンマウントは強化されたという。

マクラーレン750S(欧州仕様)
マクラーレン750S(欧州仕様)

1番の変化は、メーター用モニターが新しくなったこと。アルトゥーラのように、ステアリングコラムへ固定されている。1.8kg軽いそうで、アクティブダイナミック・サスペンションとパワートレインのモードを切り替えるスイッチが、耳のように突き出ている。

インフォテインメント・システムも刷新。アップル・カープレイへ標準で対応する。

普段使いしたいドライバーへ朗報といえるのが、ノーズリフトシステムが高速化したこと。フロント・オーバーハングの持ち上がる時間が、11秒から4秒に短縮されている。

カーボンファイバー製シェルのバケットシートは標準。720Sのスポーツシート比で、17.5kgも軽いらしい。もっと軽さを追求したければ、スーパー・ライトウエイト・カーボンシートも選べる。こちらのシェルは、3.5kgしかないそうだ。

予習はこのくらいにして、部分的に濡れたエストリル・サーキットへコースイン。タイヤは、ラップタイム重視のピレリPゼロ・トロフェオRを履いていた。

非の打ち所がないサーキットでの操縦性

ミドシップ・レイアウトとウェットが招く限定的なグリップが重なり、アクセルペダルを戻すタイミングが悪いと、旋回時にはエンジンの質量が慣性でドライバー側へ押し寄せる。テールエンドは、たまらず乱れだす。

パワフルなV8エンジンを手懐けるには、丁寧で正確な所作が求められる。ご機嫌斜めの猛獣へ、餌付けするように。

マクラーレン750S(欧州仕様)
マクラーレン750S(欧州仕様)

ターボブーストを高め、765LT用のピストンと2基目の燃料ポンプを採用。リカルド社が供給する4.0L V型8気筒ツインターボ・エンジンの最高出力は、750psへ向上している。冷却能力も強化されている。

路面が乾き出すと、タイヤにも熱が加わるようになり、予想通り750Sは本性を表し始める。直線では飲み込まれるように速い。

4000rpm付近で達するトルクの山を活かせば、風に乗った木の葉のように、750Sは路上を舞うように走る。高回転域でのエグゾーストノートも音量を増し、興奮を増長する。ランボルギーニウラカンの水準には届いていないが。

サーキットでの操縦性に、非の打ち所はない。油圧クロスリンク・サスペンションは改良を受け、トレッドはフロント側で6mmプラス。スプリングレートは、フロントが3%ソフトになり、リアは4%ハードになった。それらの結果が表れている。

コーナーのきつさを問わず、侵入時でも脱出時でも、望外な調整しろを備える。自信を持ってラインを選べ、スタンスを探れる。ブレーキペダルは、踏み初めに小さなデッドゾーンがあるものの、漸進的な反応でコーナリングの能力を拡大している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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