2023年「トップ3」はコレ ポルシェ911 GT3 RS アリエル・アトム 4R ランボルギーニ・ウラカン・ステラート BBDC 2023(6)

公開 : 2024.01.02 13:45

一度グリップすれば吸い込まれるように旋回

「心配したほど、公道への妥協はないですね。驚くほど繊細で軽く、機敏に操れます。ターンインは夢心地。トラクションは間違いなし。こんな天気とセミスリックみたいなミシュランの組み合わせでも、ドライバーへ自信を与えます。夢中になれました」

筆者も同意する。背骨へ衝撃が走り視界が霞むのでは、と身構えるような凹凸でも、ダンパーを緩めれば滑らかに通過。ステアリングはクイックでありながら、神経質さとは皆無でもある。反応の正確性と、手のひらへのフィードバックは間違いない。

ポルシェ911 GT3 RS(英国仕様)
ポルシェ911 GT3 RS(英国仕様)

トラクション・コントロールの制御と介入も素晴らしい。リアエンジン・レイアウトならではの特性を活かし、テールを振り回しながらノーズの狙いを定め、鋭い脱出へ繋げていける。

もちろん、911 GT RSの本領が発揮されるのはサーキット。ここで真の強みが表出する。今年はヘビーウェットで、すべてを開放することは叶わなかったが、それでもドライバーを強く惹き込む走りを披露した。

2日目のアングルシー・サーキットでは、ミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2は危険だと判断。より溝の多い、グッドイヤーへ履き替えての審査となった。

フロントの軽い重量配分が影響し、コーナーの侵入ではライバルより苦戦していた。だが、一度グリップすれば吸い込まれるように旋回する。気持ちまで吸い込んでいく勢いで。すっかり虜になり、筆者は予定より相当多く周回してしまった。

他のモデルでは得られない鮮烈な刺激

制限速度に縛りがないサーキットでは、輝かしいフラット6を存分に堪能できる。壮観なサウンドを奏でながら、ドライバーの後ろでエネルギーを放出する。タイトコーナーでは、目に見えず働くダウンフォースがジワジワと伝わってくる。

911 GT RSから発せられるすべての感覚が、思い切り振り回す自信へ繋がる。テールスライドにも、気兼ねなく持ち込める。ただし、細かいシャシー設定の世界へ足を踏み出すと、どっぷり浸かって抜け出せなくなるかもしれない。

アリエル・アトム 4R(英国仕様)
アリエル・アトム 4R(英国仕様)

ポルシェ・マニアは、設定を微調整できることを好むでしょう。自分の頭では、すべてのボタンが生む効果を理解できませんが」。と、バプラートが皮肉っぽく口にする。

アトム 4Rには、そんな複雑さはない。ターボブーストとトラクション・コントロールは調整できる。スパナを扱えれば、ダンパーの減衰力も選べる。だがそれ以外、基本的にはどのクルマでも共通した体験を得られる。

過去のBBDC選手権を2度制しているアトム 4の進化版、「R」には、巨大なリアウイングが追加されている。ホンダ製直列4気筒ターボから、さらなるパワーが引き出されている。しかし、他のモデルでは得られない鮮烈な刺激は変わりない。

「落ち着きが素晴らしい。操縦性の調整域の広さや、コミュニケーション能力は秀抜」。アトム 4Rから降りるマット・プライヤーが、微笑みながら熱く語る。

この続きは、BBDC 2023(7)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・ディスデイル

    James Disdale

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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