フィアット600 詳細データテスト 500より増した実用性と快適性 フィアットらしい元気さは不在

公開 : 2024.06.22 20:25

内装 ★★★★★★☆☆☆☆

このクルマはBセグメントとしては大きめだが、はっきりそうだと感じることはあまりないだろう。キャビンは、このクラスにしてはワイドに思え、前席のヘッドルームも広い。荷室容量360Lというのも、比較的大きいほうだ。しかし、後席は狭い部類に入る。もっと小柄な普通のBセグメント車や、手頃な価格帯のEVには、これより後席が広いモデルも多い。

前席の着座位置はやや高い。乗り込む際には、高いシルにかかとが触れないようにしつつ、床下のバッテリーによるフロアパンの張り出しも避ける必要がある。プラットフォームを共用する、ステランティスのEVによく見られる癖だ。

一見、大ヒットした500ファミリーの雰囲気をうまく取り込んでいるが、兄弟車のジープ・アヴェンジャーとの共通性は明らかだ。
一見、大ヒットした500ファミリーの雰囲気をうまく取り込んでいるが、兄弟車のジープ・アヴェンジャーとの共通性は明らかだ。    JACK HARRISON

とはいえ、座ってしまえば快適だ。フィアットのロゴが大胆に型押しされたシートは、小ぶりで硬め、パッドはやや薄めだが、調整機構はちゃんとしている。操縦系の配置もバッチリで、こちらもちゃんと調整が効く。エルゴノミクス面で残念だったのは、やや浅めのフットウェルと、長さと傾きが変えられないクッションくらいだ。

宣伝資料には500の美点をどれだけうまく取り入れたかというような説明が並ぶものの、実際には兄弟分のジープとの共通性が目に付く。独自の丸みを帯びたメーターパネルやダッシュボード上部を用いているが、送風口から下へ目を向けると、アコーディオン式リッドを持つセンターコンソールの大容量ストレージなど、アヴェンジャーと同じ作りだ。

10.3インチのタッチ画面式インフォテインメントシステムも、表面的なグラフィック以外は同じもののよう。エアコンパネルやウインカーレバー、ステアリングホイールのスイッチ類など、探せば共用部品は数多く見つかる。

ステランティスにとって、パーツのシェアはお手の物で、われわれもたいして気にはしていない。さまざまな車種を日頃から乗り比べているから気付くだけで、一般ユーザーは言われなければわからない場合も多いだろう。とはいえ、これがいかにもイタリア車らしいコクピットだというフィアットの主張は、ちょっと受け入れがたいものがある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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