「500+100」の理由を満たす余裕! フィアット600eへ試乗 カワイイだけじゃない優等生

公開 : 2024.03.22 19:05

小さな電動クロスオーバー、600eが登場 500eの影響を隠さない、丸みを帯びた見た目 航続距離は最長405km 広い車内に魅力的なインテリア 英国編集部が評価 

40年ぶりの600 航続距離は最長405km

600「セイチェント」という、伝統の名前が40年ぶりに復活した。ステランティス・グループ設立後のフィアットで初となる、新しいクロスオーバーが英国にもやって来た。

このフィアット600eは、イタリアン・ブランドにとって非常に重要なモデルだ。欧州で最も売れているコンパクト・バッテリーEV、フィアット500eが切り拓いた成功をしっかり受け継ぐという、大切な使命を負っている。

フィアット600e ラ・プリマ(英国仕様)
フィアット600e ラ・プリマ(英国仕様)

基礎骨格とするのは、同グループに属するシトロエンE-C4やジープアベンジャープジョーE-2008などと同じ、e-CMPプラットフォーム。容量51kWhの駆動用バッテリーも、それらと共有する。

1度の充電で走れる距離は、カタログ値で最長405km。電費は6.4km/kWhがうたわれる。駆動用モーターは、フロントアクスル側に積まれ、最高出力153psと最大トルク26.3kg-mを発揮。0-100km/h加速は9.0秒と、悪くない動力性能を備える。

バッテリーEVらしく、加速は滑らか。普段使いでは、不満のない活発さを持つ。ただし1520kgの車重が影響してか、長く続く登り坂では、アクセルペダルを深く踏み込む必要もある。モアパワーを求めるドライバーもいるだろう。

エコ・モードを選択すると、明らかにパワー感が落ちる。緩やかな勾配でも、速度に影響が現れてしまう。それでも、冬場にも関わらず、今回の電費は平均で6.1km/kWhと悪くなかった。エネルギー効率を考えれば、我慢はできるだろう。

ちなみに、この電費で想定できる航続距離は約310km。夏場のイタリアでの試乗より、42kmほど短い数字だ。

魅力的なインテリア 500より広い車内

乗り心地は、英国の傷んだアスファルトを滑らかにいなし、快適と呼べる。穏やかな動力性能と調和している。

ステアリングレシオはクイックと呼べないが、キビキビと反応し市街地では扱いやすい。高速コーナーで一体感を味わえる特性ではないものの、安定したグリップ力で、安心感は高い。このクラスのクロスオーバーとしては、運転が楽しいといっていい。

フィアット600e ラ・プリマ(英国仕様)
フィアット600e ラ・プリマ(英国仕様)

インテリアの雰囲気は、現在のステランティス・グループの同クラスでは、魅力的に映る。アベンジャーと共有する部分も散見されるが、否定的に捉える必要はないだろう。

フィアットらしいシンプルなダッシュボードに、丸いメーターパネルが配され、実際に押せるハードボタンがコンパクトに集約されている。タッチモニターも丸みを帯び、シートにはフィアットのロゴが大胆にエンボスであしらわれる。

同社は、600eの「500+100」の理由をしっかり満たしたと主張する。特徴的な見た目をまとい、適度にコンパクトで扱いやすい機能性を備えつつ、より広い車内空間を得たことを意味する。

確かに、前後ともシート周りには充分な広さがある。頭上方向にも余裕がある。リアシートには、大人3名で座れなくもないが、多少の我慢は必要だろう。荷室容量は360L。使い勝手の良さそうな形状をしている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジャック・ウォリック

    Jack Warrick

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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