フィアット600 詳細データテスト 500より増した実用性と快適性 フィアットらしい元気さは不在

公開 : 2024.06.22 20:25

走り ★★★★★★★☆☆☆

今回のテストは、ステランティスのEVが、最新のゼロエミッションパワートレインのハードウェアを得て、どれくらい改善しているのかを測ることができる機会でもある。

グループの第1世代にあたるバッテリーとモーターを積んだシトロエンe−C4Xは、今回のフィアットとほぼ同じ重量だったが、0−97km/hは10秒をやっと切るくらい、48−113km/hは8.8秒だった。対する600eは、ドライコンディションで8.8秒と7.7秒だ。

ステランティスの前世代EVからはたしかな動力性能の改善を見ているが、このクラスではさほど速さを競えるほどではない。
ステランティスの前世代EVからはたしかな動力性能の改善を見ているが、このクラスではさほど速さを競えるほどではない。    JACK HARRISON

つまり、第2世代に入ったEVコンポーネンツは、たしかに進化を遂げている。とはいえ、特別エネルギッシュさを売りにできるようなEVというわけでもない。ほとんどのライバルが、これより速いと言ったほうがわかりやすいか。

しかし、もっと残念なのは、このモーターのパワーデリバリーの設定だ。それに関してはフィアットに限ったことではなく、系列ブランドにも共通しているのだが。

600eに設定される走行モードはエコ/ノーマル/スポーツだが、先代モーターが発生した132psを上回るのはスポーツのみ。つまり、より元気な走りとドライバビリティ改善を求めるなら、自然とほかのモードは除外される。

さもなくば、スロットルペダルをキックダウンスイッチが効くまで踏み込むことになるが、その際の挙動はやや乱暴に感じられた。ノーマルモードで走らせた場合、80km/hを超えると非力さを覚えるかもしれない。

エネルギー回生の操作はきわめてシンプルで、タッチは軽いので、EV以外からの乗り換えがしやすい。調整パドルなどはなく、トランスミッションにBレンジがあるだけで、スロットルオフでのエネルギー回収をごくわずかなものからほどよいレベルに引き上げてくれる。

そのため、ワンペダル運転的なモードはない。そうなると、ブレーキペダルのプログレッシブな効き具合を当てにしたくなるが、その点ですばらしく成功しているとはいえない。しかし、スロットルを抜いた際にコースティングを効かせて、進む勢いを殺したくないなら、このセッティングが気にいるだろう。それも含めて、調整が効けばなおいいのだが。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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