チャップマンが驚いた「手作り」スポーツカー ギャモンMG TC(1) ベースは中古のTC ミジェット

公開 : 2024.08.03 17:45

名門へ勝ちたいと考えたアマチュアが自作したスポーツカー ベースはMG TC ミジェット 初シーズンから連勝し2年で80回の表彰台 初期のロータスに大きな影響を与えた1台を、英編集部がご紹介!

名門へ勝ちたいと考えたアマチュアドライバー

ロータスやフレイザー・ナッシュ、モーガンの小さなスポーツカーより速いマシンを、ジャイアントキラーと呼ぶのは大げさかもしれない。それでも、各ブランドがモータースポーツで一目置かれる存在だったことは間違いない。

アマチュアドライバーのピーター・ギャモン氏は、そんな名門へ勝ちたいと考えた。時代遅れになっていたMG TC ミジェットのシャシーをベースに、独自のマシンを作り上げると、1952年にそれを叶えてみせた。

ギャモンMG TC(1951年)
ギャモンMG TC(1951年)

ロータス・シックス(Mk VI)で負けたコーリン・チャップマン氏は、握っていたキーをギャモンへ手渡したとか。悔しさを誤魔化すために。手作りのスポーツカーが、初期のロータスへ小さくない影響を与えたことは、広くは知られていない歴史だろう。

グレートブリテン島南部、ギルフォードの洋服店に生まれたギャモンは、裕福ではなかった。彼が1951年に購入したTC ミジェットは新車ではなく、2オーナーの中古車。以前のオーナーが、レースへ何度か参戦していたクルマだった。

1945年にリリースされたTC ミジェットの後継として、TD ミジェットが1950年に登場。既に競争力は落ちていたが、ギャモンは可能性を見出したようだ。1952年シーズンに向けて、マシンの製作が始まった。

ベースはTC ミジェット アルミ・ボディは自ら成形

それが、今回ご紹介するアイボリーの1台。サイクルフェンダーが付いたシンプルなアルミニウム製ボディは、彼自身がデザインし、成形したと考えられている。ウッドフレームで組まれた、ボクシーな標準ボディより、遥かに軽量だったことはいうまでもない。

1950年代の英国では、自らマシンを仕上げるアマチュア・レーサーが少なくなかった。とはいえ、ギャモンの技術はかなり高かったといえる。

ギャモンMG TC(1951年)
ギャモンMG TC(1951年)

また彼は、遠くないチェシントンの街にあった、バーウェル・エンジニアリング社と繋がりがあった。そこへ務める技術者、ジョン・ルーカス氏の手で、直列4気筒1500ccのXPAGユニットは組み上げられた。アルミ製のシリンダーヘッドが特徴といえた。

これ以外にも、同社はギャモンのマシン製作を積極的にアシストした。ピアレスGTという少量生産のスポーツカー開発へ後に携わることになる、バーニー・ロジャー氏によって、TC ミジェットのシャシーはチューニングを受けた。

果たして、ギャモンMG TCは1951年末に完成。初レースは定かではないが、その年末のイベントか、1952年3月の第8回グッドウッド・メンバーズミーティングだったと考えられている。目立った戦績は残せていないが。

続く5月にも、同じメンバーズミーティングへ参戦。ここで見事に3位入賞を果たし、初めて完走しただけでなく、彼にとって初表彰台となった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ギャモンMG TCの前後関係

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