「エンジン」でも航続距離は長くない BMW M2 長期テスト(3) F32型より広い全幅

公開 : 2024.09.01 09:45

M謹製の直列6気筒ターボを積んだ稀代のコンパクト・クーペ、M2 ひと回り拡大した正統派モデル あえて売れ筋のATを選択 普段使いの印象は? 英国編集部が長期テストで完成度を確認

積算8389km 初代4シリーズよりワイドなM2

G87型BMW M2のボディサイズへ、すっかり慣れた筆者。最近は、特に大きいとは感じていない。

しかし先日、とある駐車場で初代4シリーズ、F32型とニアミス。もはや、小さなクルマとは呼べないことを実感した。全長はほぼ同じ。フロントグリルが強調されているぶん、前からの姿はM2の方が断然大きく見えたほど。実際、全幅はより広いのだ。

BMW M2 クーペと、F32型の初代BMW 4シリーズ
BMW M2 クーペと、F32型の初代BMW 4シリーズ

積算9442km 2ドアクーペの割に広い荷室

M2のオーナーなら、週末は交通量の少ないエリアへ足を伸ばすことが一般的かもしれない。しかし先週末の筆者は、自宅を整理し、不要な物品をチャリティーショップへ持ち込むことで追われた。

ありがたいことに、M2の荷室は2ドアクーペの割に広い。開口部の底辺が狭いものの、実用性には感心させられる。軽くなった帰路では、寄り道して運転も楽しめる。

BMW M2 クーペ(英国仕様)
BMW M2 クーペ(英国仕様)

積算1万118km 航続距離はさほど長くない

バッテリーEVの長期テストで、テーマとなるネタの定番といえば、長くない航続距離と充電の手間だろう。現在のモデルが抱える弱みだけでなく、グレートブリテン島の充電ネットワークの不確実性が、大きく影響している。

内燃エンジンのモデルと比較して、1度のエネルギー補給で走れる距離が短いことは、最新のバッテリーEVでも課題。どうしても、充電器につなぐ回数は増えてしまう。

BMW M2 クーペ(英国仕様)
BMW M2 クーペ(英国仕様)

ところがBMW M2も、航続距離が長いわけではない。3.0L直列6気筒ターボガソリンの燃費は、カタログ値で10.2km/L。普段使いしている最近の平均値は、8.3km/Lでしかない。ガソリンタンクの容量も、52Lと小さめだ。

結果として、1度の給油で走れる距離は良くても450km程度。気持ちを鎮めて運転し続ければ、もう少し燃費は伸ばせるはず。しかし、M2のステアリングホイールを握っているのだから、それは簡単ではない。楽しまないなんて、もったいない。

比較的コンパクトなスポーツクーペだから、400km以上も走れれば充分とはいえる。それでも、この仕事をしていると長距離移動が必要な予定は多い。それが、何週間も続くことも珍しくない。ガソリンスタンドへ立ち寄り、給油へ費やす時間は増えがちだ。

ガソリンが少ない深夜に早く帰るには

バッテリーEVの充電と、決定的な違いはある。現状のグレートブリテン島では、ガソリンスタンドを見つける方が、急速充電器を見つけるより遥かに簡単。満タンになるまでの時間も、満充電になるより遥かに早い。

ただし、M2がお望みのハイオクガソリンは安くない。バッテリーEVで同じ距離を走れる電気代より、英国では高く付くことが一般的だ。

BMW M2 クーペ(英国仕様)
BMW M2 クーペ(英国仕様)

先日の夜に、グレートブリテン島南部のロンドン・ガトウィック空港へ向かう飛行機は、諸事情で遅れた。M2のタンクに残るガソリンが少ないことには気づいていたが、行きは渋滞が酷く、給油は帰り道にすることにしていた。

こんな状況の深夜で、早く自宅へ辿り着きたい時には、2つの選択肢がある。アクセルペダルを丁寧に傾けて、できるだけ効率良く走るか、急いで走れるだけ走って、途中でエネルギーを補充するか。バッテリーEVなら、間違いなく前者を選ぶだろう。

しかしM2なら、後者を選んでも間違いではない。スタートボタンを押してエンジン音を聞いたら、自ずとそうしていた。結果的に不慣れなガソリンスタンドへ立ち寄ったが、後悔することはなかった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

長期テスト BMW M2の前後関係

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