【詳細データテスト】アストン・マーティン・ヴァンテージ 速さと快適性を高次元で両立 魅力的な改良

公開 : 2024.09.28 20:25

快適性/静粛性 ★★★★★★★★☆☆

ヴァンテージは、一日中乗っていても苦ではないクルマなのがうれしい。アストン・マーティンのエントリーモデルがスポーティさのレベルアップを図ったとはいえ、それでもこれはラグジュアリーなフロントエンジンGTなので、長距離走行でのマナーは必要だ。それが足りなければ、かなりのマイナス評価となっただろう。

まず、運転関連のエルゴノミクスが優れている。背の高いドライバーでも、ショートアーム・ロングレッグのトラディッショナルなポジションを取ることが可能だ。シート自体の形状もよく、サポート部がしっかり張り出していながら、それほど邪魔にならない。

ダンパーの特性はモードによる開きが大きいものの、過度に硬かったり柔らかかったりはしない。騒音値は小さくなかったが、ノイズの質は不快なものではなかった。
ダンパーの特性はモードによる開きが大きいものの、過度に硬かったり柔らかかったりはしない。騒音値は小さくなかったが、ノイズの質は不快なものではなかった。    JACK HARRISON

視認性は、この手のクルマとしては良好だが、はじめて乗るとやや気圧されるところはある。スカットルが高く、ボンネットが長く、四輪の位置が把握しづらい。ただし、すぐ慣れてしまう程度だ。

乗り心地は思いのほか良好。アストンによれば、ダンパーがプライマリーライドもセカンダリーライドもうまく処理するというが、それは実感できた。もっともソフトなスポーツと、もっとも過激なトラックとのパラメーターにはかなりの開きがあるものの、どちらを選んでもふらふらしたり、骨まで響くほど不快に硬かったりして、このクルマに合わないと思わされることは決してない。ほぼいつでも、上々のはたらきを見せてくれる。おみごとだ。

静粛性は興味深い。113km/hでは73dBAで、従来モデルと同じ。かなりうるさかったポルシェ911ターボSの74dBAとも大差ない、とくに静かではない数字だが、ヴァンテージのノイズは乗員を疲れさせるような性質ではない。テスト中には1日で600km以上走ることもあったが、走り終えてもかなりスッキリした気分でいられた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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