【詳細データテスト】アストン・マーティン・ヴァンテージ 速さと快適性を高次元で両立 魅力的な改良

公開 : 2024.09.28 20:25

大幅改良されたアストンのエントリーモデルは、動力性能も運動性も高めつつ、GTカーとしてのマナーも優秀。新たな電子制御で安心感を引き上げながら、それをカットすればワイルドな走りも。守備範囲が広いGTスポーツです。

はじめに

アストン・マーティン・ラゴンダ・グローバル・ホールディングplcというフルネームの、111年の歴史を持つこの会社にとって、2024年は記念すべき年になろうとしている。まず、ル・マンのトップクラスへの回帰を表明し、2台のヴァルキリーが世界耐久選手権への参戦準備を整えた。

次に、フラッグシップであり、フェラーリ12チリンドリに対する835psの力強いレスポンスである新型ヴァンキッシュをローンチ。さらに、フェルナンド・アロンソの依頼で開発が始まった、V12をMTで操る限定車のヴァリアントも発表した。

テスト車:アストン・マーティン・ヴァンテージ
テスト車:アストン・マーティン・ヴァンテージ    JACK HARRISON

300万ポンド(約5億7600万円)オーバーのミドシップ・ハイブリッドハイパーカーであるヴァルハラも、本領を発揮すべくテストを開始した。そして昨年、DB12を発売してから、株価にもいい兆候が出ている。そうそう、最近ではベントレーのトップだったエイドリアン・ホールマークが、CEOとして加わったのもトピックだ。

しかしながら、おそらくそのどれも、改良型ヴァンテージの登場ほど重要ではないだろう。325km/hに達する665ps/81.6kg-mのモデルをそう呼ぶことに賛同してもらえるかどうかはともかく、アストンのエントリーモデルは、DBXを別にすれば、V8を積む稼ぎ頭になるだろう。

ヴァンテージは、ベントレーやポルシェメルセデスAMGマセラティ、そしてもちろんフェラーリのライバル車に対して、アストンを代表するモデルと見なされることがもっとも多いであろうスポーツカーだ。その最新型は、これまで以上にスーパーカーを脅かす存在になった。ローレンス・ストロールがアストンに望む方向性を象徴するものでもある。フェラーリに照準を定めているのが明白だ。

従来比で30%もパワーアップし、最高速度も引き上げられた改良型ヴァンテージだが、楽しめるハンドリングバランスが犠牲になってはいないだろうか。確かめていこう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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