美しさは永遠なり マセラティMC20 長期テスト(最終) ネットウーノV6エンジンの臨場感

公開 : 2025.01.19 09:45

現代のマセラティを象徴するスーパーカー、MC20 フェラーリやランボルギーニ、マクラーレンの競合との位置関係は? 数字競争から一歩引いた姿勢が生む個性とは 英編集部が魅力を深掘り

積算1万8388km イメージリーダーの役目を果たすMC20

愛すべきマセラティは、いま苦境にある。2024年の業績は、好調とはいえなかった2023年より悪化するらしい。ステランティス・グループを率いるカルロス・タバレス氏は、マーケティングに課題があると考えているようだ。

特に、ポルシェにおけるマカンの役目を負った、グレカーレの販売が不調にある。タバレスは、「ドルチェ・ヴィータ(イタリア的な甘い生活)」の刷り込みが不充分だと表現している。お高めの価格も影響しているのではと、筆者は考えている。

マセラティMC20(英国仕様)
マセラティMC20(英国仕様)

今のマセラティは、イメージリーダーの役目を果たせる、スーパーカーをラインナップしている。この稀有な存在、MC20を、もっと活用しても良いように思う。

長期テストでMC20と短くない時間をともにした英国編集部だが、その誰もが、この魅力へ強く惹き込まれていた。マクラーレンフェラーリのライバルと異なり、ハイブリッドではないし、動的能力でも劣るが、視覚的・聴覚的にはこの上なく素晴らしい。

加えて、普段使いも驚くほどしやすい。英国編集部へやって来た時の走行距離は1万2425kmで、数か月のうちに6000kmほど距離を重ねた。ノーズリフトシステムの警告灯が点灯したものの、自然に消え、それ以外は不具合と呼べるものは起きなかった。

エンジンオイルの消費量は最小限。スタッフの1人がサーキットでの走行会へ挑んでいるが、ブリヂストンのタイヤは1mm程度しか減っていなかった。

見事な長距離移動の快適性 心地いい車内空間

ハイブリッドではないから、燃費は運転の仕方で大きく変わった。8速ATの機械任せにし、穏やかに高速道路を流している限り、V6ツインターボのネットウーノ・ユニットは12.5km/Lを叶えてくれた。60Lのタンクを満タンにし、700km以上は走れる計算だ。

キャビンは居心地が良い。素晴らしく。ステアリングホイールはテレスコピック(前後)方向の調整も可能で、理想の運転姿勢を探し出せる。ただし、ドアポケットはなし。カップホルダーはセンターコンソールの後方で、勝手が良いわけではないが。

マセラティMC20と筆者、リチャード・レーン
マセラティMC20と筆者、リチャード・レーン

インテリアのシンプルなデザインも筆者好み。タコメーターがアナログではないのが少し残念だとしても、小ぶりなメーター用モニターがシリアスな雰囲気を作っている。スーパーカーは華やかさだけではないと、静かに主張するように。

リアの荷室には、フロントの小さな収納と合わせて、大人2名で数日間の旅行の荷物を積める。1人なら、4日分の着替えと一緒でも問題ない。ドイツ・フランクフルトまで、筆者は実際に試みている。

長距離移動の快適性も特筆すべき点だった。ドイツより、もっと遠くを目指したいと思わせるほど。

スタイリングはエレガント。筆者の目には、ライバルのフェラーリ296 GTBやマクラーレン・アルトゥーラより、カッコ良く映っている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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