【詳細データテスト】アルピナB3 さらに増した力強さ 高まったハンドリングの精度 全天候型の速さ

公開 : 2025.01.18 20:25

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

従来のB3とこのGT、違いはわずかだが効果的だ。少なくとも、パフォーマンス面に関しては。

エンジンはこれまでどおり、BMW M3のS58型3.0L直6ベースだが、これまででもっともパワフル。2020年に登場した現行B3はまず462ps、2022年のマイナーチェンジで495psとなり、今回は529psだ。

カナードとブロンズカラーの20インチホイールが、通常のB3との識別点。ハイパフォーマンスブレーキキットも標準装備される。
カナードとブロンズカラーの20インチホイールが、通常のB3との識別点。ハイパフォーマンスブレーキキットも標準装備される。    JACK HARRISON

さらにトルクは74.4kg-mに達する。これは先代M5 CSのV8がマークした76.5kg-mに迫るものだ。2022年型B3は73.1kg-mで、今回の数字は信頼性を考えるとS58型の限界スレスレではないだろうか。

GTで改善されたのは5500rpm以上の領域だ。エクストラパワーを発生し、ここまで残るトルクも高まった。

駆動系は従来どおり、B3のベースであるM340iのxドライブを強化したもの。アルピナはデフォルトのトルク配分をより前に振り、スタビリティ向上と全天候型のトラクションを確保している。ギアボックスはZF製のATで、V8用からパーツを流用し、大トルクに対応した。

通常のB3で追加されたラジエーターや冷却経路はそのままで、M3の前輪より細い265幅の後輪も変わらない。タイヤ銘柄は、アルピナの認証を得たピレリPゼロだ。前輪はさらに細く、よりナチュラルなアジャスト性に寄与する。ホイールは20インチだ。

そのほか、スタビライザーが強化され、電動パワーステアリングが再調整されているが、どちらもより鋭いターンインを実現するためだ。新設された魅力的なドーム・バルクヘッド・レインフォースメント・ストラットは、もともと備わる精密さやアジリティを高める。

ダンパーセッティングはGT専用で、アルピナは快適性を保つことを重視したという。近年のアルピナがどれもそうであるように、B3GTもコンフォートプラスモードを用意する。これはM3やM340iにはないものだ。

従来車との識別点は、鍛造ホイールとフロントバンパーのカナードくらい。この手の空力パーツがついたアルピナといえば、E92のB3GT3くらいしか思い浮かばない。リアディフューザーも形状を見直しているが、最高速度が305km/hを超えるクルマには必要なのかもしれない。

改善の要望を上げるなら、ひとつは重量だ。満タンで1910kgというのは、2020年に計測したB3より30kg、公称値より40kg重い。M3ツーリングも、このクルマより5kg軽い。標準ホイールより1本あたり4kg軽い鍛造ホイールを履くのもあって、1900kgは切ると思ったのだが。

記事に関わった人々

  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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