レザー内装は過大評価されている 布地の方が良い 英国記者の視点

公開 : 2025.02.11 18:05

高級車の内装といえば「レザーシート」だが、近年サステナビリティへの関心の高まりからファブリック素材が復権しつつある。手触りや居心地の良さ、デザインの自由度など、「布」の方が優れていると英国記者は考える。

「ファブリック」の復権

コスト削減は聞こえの良い話題ではない。ジャーナリストは、「コスト削減と値上げを目的として、意図的に新型車の性能を悪くしました」というプレスリリースを受け取ることはまずない。

しかし、サステナビリティ(持続可能性)は売れる。少なくとも自動車メーカーはそう考えている。「レザーをビニール素材に置き換えました。ビニールの方が安価だからです」などとは言わない。

手触りや居心地の良さ、デザインの自由度など、布製内装には利点が多い。(写真はボルボEX90)
手触りや居心地の良さ、デザインの自由度など、布製内装には利点が多い。(写真はボルボEX90

代わりにこう言う。「リサイクルボトルから作られたヴィーガン素材のSensitastic張り地を採用した新開発の◯◯です。牛たちのことを考えない人はいないでしょう?」

レザーは食肉生産の副産物であることが多く、それ自体が目的ではないが、そんなことは気にしない。

筆者は、レザーシートから離れるのは良いことであり、デザイナーの創造性を刺激するだろうと考えていた。というのも、正直なところ、筆者はレザーが過大評価されていると思うからだ。冬は寒く、夏は暑く、グリップ感もあまり良くない。布製よりも劣ることは確かだ。その代わりに、ビニールが復活した。

しかし、希望の光も見え始めている。それは、新しい素材に挑戦しようという意欲的なデザインチームがいくつか存在していることだ。最も著名な推進者の1つがボルボで、数年前からウール混紡の内装材を一部のモデルに設定しており、価格もレザーよりは抑えている。

先日借りたXC40にも装備されていたが、素晴らしいと思った。ボルボのシートはとにかく快適なことで知られているが、通気性のある天然素材のファブリックと組み合わせることで、さらに居心地の良い空間となっている。

また、真っ黒には染められていないので、多くの新型車の陰気な内装とは対照的だ。

自宅の居間の壁を黒く塗る人はあまりいないだろう。それなのに、なぜクルマの内装は黒なのか? ウール素材の杢調の白やグレーは、レザーのフラットな表面よりもずっと面白い。

フォルクスワーゲン・グループの一部のブランドも、ベロア素材のマイナーな復活の波に乗っているようだ。スコダのスパーブやコディアックでは、ダークグレーのソフトファブリックが標準装備されており、より高価なグレードではレザーが使われている。また、クプラボーンでも、最も高価なV3グレードで同様の素材が採用されている。

布地とレザーのどちらにするかという問題は、世代を超えて繰り返されるものなのだろうか。

何と言っても、初期の自動車では、使用人の運転手が耐候性のあるレザーシートに座り、オーナーはキャビン内の布製ベンチシートで贅沢に過ごしていた。

しかし、ある時期からレザーは贅沢品となった。筆者の両親もレザーシートのないクルマには興味を示さなかっただろう。一方で、筆者がこれまで乗ったクルマのほとんどにはレザーシートが採用されていたが、初めて購入したクルマ、ベロアが張られたベース仕様のE30世代BMW 316iツーリングにはとても愛着がある。

だから、ボルボ、スコダ、クプラはお見事だと思う。トレンドによるものなのか、サステナビリティを求める動きによるものなのかはわからないが、これがより面白い内装材の時代の始まりとなることを願っている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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