買える望みは「ミニカー」だけ? マクラーレンF1 UK中古車ガイド 史上最高のロードカー

公開 : 2025.04.25 19:05

実用性も悪くない 普通のクルマのように乗りたい?

売りに出される機会も、滅多に来ない。マクラーレンF1オーナーズクラブを創設したベルムによると、稀にオークションへ出品されるものの、殆どは非公開で落札されるという。「それでも昨年は、数台のクルマが売買されています」

「初代のオーナーが70歳代になり、最近はそれなりの数が流通し始めています。自分は2004年にシャシー番号16のF1を、35万ポンドで落札しました。当時は、そこまで高くなかったんです。しかし2011年頃から、相場の高騰が始まっています」

マクラーレンF1(1992〜1998年/英国仕様)
マクラーレンF1(1992〜1998年/英国仕様)

軽量なカーボンファイバー製シャシーによって、F1の運転体験は他に例がない。常識を打ち破った、左右に助手席が並ぶ3シーター構成は、深い陶酔感を生む。運転姿勢は完璧といえ、スリムなリムのステアリングホイールは握りやすい。

運転席へ座れば、足もとの正面に3枚のペダル。太ももの両脇には、スイッチ類が整列している。ハイパーカーとして、実用性も悪くはない。ドライバーの他に2名の家族や友人を乗せられ、ドアの後方には小さくない収納も設けられている。

一生に1度は乗りたい、と願いたいところだが、最近のお値段は2000万ポンド(約39億円)以上。F1 GTRは、3000万ポンド(約58億5000万円)を下らない。

「もし購入したら、普通のクルマのように乗るのが正解だと思います。ガレージへ仕舞い込んだり、博物館で展示するだけなんて、所有する意味がありませんよね?」。ベルムらしいアドバイスだ。

新車時代のAUTOCARの評価は?

マクラーレンF1は、公道を走るために作られた最高のドライバーズカーだといえる。ル・マン24時間レースへ出場するような、殆どのレーシングカーより走行性能は優れるが、それはこの徹底的なマシンの偉業の1つの側面でしかない。

F1は、常にドライバーを高ぶらせつつ、圧倒しないマシンといえる。自動車史における偉大な1台として、深く刻まれると確信している。もし54万ポンドの予算を準備できるなら、自分も注文する行列へ加わるはず。(1994年5月11日)

マクラーレンF1(1992〜1998年/英国仕様)
マクラーレンF1(1992〜1998年/英国仕様)

オーナーの意見を聞いてみる

レイ・ベルム氏

「1992年のモナコでの発表イベント直後に、シャシー番号46を注文しました。レーシングカーへ改造してもらう計画で。ロン・デニスさんには断られましたが。しかし、100万ポンドでワンオフのレーシングカーを作っても良いと、提案されました」

マクラーレンF1(1992〜1998年/英国仕様)
マクラーレンF1(1992〜1998年/英国仕様)

「そんな大金はありませんでしたが、レーシングカーを希望する人を他に3名探したら、税抜き65万ポンドでも構わないとのこと。自分は2人の希望者を探し出しました。そのクルマはロードカーと同時に納車されたので、当時はF1を2台所有していたんです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    サム・フィリップス

    Sam Phillips

    役職:常勤ライター
    AUTOCARに加わる以前は、クルマからボート、さらにはトラックまで、EVのあらゆる側面をカバーする姉妹誌で働いていた。現在はAUTOCARのライターとして、トップ10ランキングや定番コンテンツの更新、試乗記や中古車レビューの執筆を担当している。最新の電動モビリティ、クラシックカー、モータースポーツなど、守備範囲は広い。これまで運転した中で最高のクルマは、1990年式のローバー・ミニ・クーパーRSP。何よりも音が最高。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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