買える望みは「ミニカー」だけ? マクラーレンF1 UK中古車ガイド 史上最高のロードカー

公開 : 2025.04.25 19:05

現存106台のハイパーカー、マクラーレンF1 エンジンはBMW謹製の6.1L V12 信頼性は極めて高い 実用性も悪くない 買ったら普通車のように乗るのが正解? UK編集部が魅力を振り返る

現存は106台 史上初のハイパーカー

数世紀に渡る自動車史で、史上最高のロードカーはどれだろう。数多くの名車が作られてきたが、技術力と設計力で1990年代を代表する1台といえば、マクラーレンF1だろう。どの年代の最高傑作と比べても、その崇高さは劣らない。

レーシングカーやプロトタイプを含めても、現存するF1は106台しかない。マクラーレンのカリスマは、仮に大富豪のカーマニアであっても、購入できる機会はもちろん、実際に目撃することすら簡単ではない。

マクラーレンF1(1992〜1998年/英国仕様)
マクラーレンF1(1992〜1998年/英国仕様)

しかし、短い人生は何が起きるかわからない。キャリーオーバーが溜まった宝くじが当たったり、遠い親戚から2000万ポンド(約39億円)の遺産が舞い込んでくる可能性も、完全なゼロではないはず。いつかに備えて、知識を持っておくことは悪くない。

F1の開発を率いたのは、ゴードン・マレー氏とピーター・スティーブンス氏という、ゴールデンコンビ。発売は1992年で、スーパーカーを超越した、史上初のハイパーカーといって良かった。

その2年後、AUTOCARへ試乗機会が到来し、詳細データテストを実施している。この時に残された記録は、マクラーレンにも公式なスペックとして利用していただいている。

0-97km/h加速は3.2秒で、0-161km/h加速は6.3秒、0-241km/h加速は12.8秒を達成。最高速度は370km/h以上だった。当時としても世界を塗り替えるような数字だったが、今でも殆どのスーパーカーを凌駕する速さだ。

エンジンは6.1L V12 NA 信頼性は極めて高い

ミドシップされるエンジンは、自然吸気の6064ccV型12気筒。マレーによる依頼を受けてBMWが製造したユニットで、最高出力は636ps、最大トルクは66.3kg-mを誇る。

もとレーシングドライバーのレイ・ベルム氏の話では、本格的なル・マン・レーサーを彷彿とさせる驚異的な速さと音響を叶えつつも、信頼性は極めて高いとか。彼は1994年に、シャシー番号46のオーナーになっている。

マクラーレンF1(1992〜1998年/英国仕様)
マクラーレンF1(1992〜1998年/英国仕様)

その頃マクラーレンのCEOだったロン・デニス氏へ、ベルムは直訴。サーキット仕様のF1を要望し、F1 GTRが作られるきっかけを生んだ。「自分はこれまで5台のF1を所有してきましたが、いずれも完成度は高く、整備上での問題はありませんでした」

「レーシングカー仕様は、トラブルでエンジンの載せ替えが必要になり、当時で8万ポンド支払いました。今なら、100万ポンド(約1億9500万円)程度はかかるでしょうね」。ベルムが笑顔で教えてくれた。

ちなみに、クラッチ交換だけでも数万ポンド(数100万円)は必要とのこと。軽量なケブラー製ガソリンタンクは、5年毎の交換が求められているが、作業にはエンジンを下ろす必要がある。もちろん、簡単なことではない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サム・フィリップス

    Sam Phillips

    役職:常勤ライター
    AUTOCARに加わる以前は、クルマからボート、さらにはトラックまで、EVのあらゆる側面をカバーする姉妹誌で働いていた。現在はAUTOCARのライターとして、トップ10ランキングや定番コンテンツの更新、試乗記や中古車レビューの執筆を担当している。最新の電動モビリティ、クラシックカー、モータースポーツなど、守備範囲は広い。これまで運転した中で最高のクルマは、1990年式のローバー・ミニ・クーパーRSP。何よりも音が最高。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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