【渡辺敏史が都内で試乗】オープンカーでマウントを取れる?フェラーリ・ローマ・スパイダーは究極の選択肢

公開 : 2025.04.14 11:45

風の乱流をしっかり封じ込める

実用性という点でいえば、トノカバー内に格納される畳まれた幌は厚みも抑えられているため、オープン時にも255Lの荷室容量を確保。トランクスルー機能も備えているため、形状によっては長尺ものの積載も可能だ。

また、走行風の巻き込みが多い2+2のオープンカーでは必須のウインドディフレクターは後席の背もたれをチップアップするユニークなスタイルだが、外観への影響を最小限に留めながら風の乱流をしっかり封じ込めている。その効果は日常的な速度域での試乗の最中でも十分感じ取ることができた。

ウインドディフレクターは後席の背もたれをチップアップするユニークなスタイル。
ウインドディフレクターは後席の背もたれをチップアップするユニークなスタイル。    山本佳吾

ともあれ、もっとも感心させられるのは乗り心地の良さだ。前述の通り、シャシーには独自の補強が加えられるが、オープンカーならではのしなり効果もあってだろう、凹凸のいなしが柔らかい。ライドコンフォートが備わっていることについては今日びのフェラーリでは珍しい話ではないが、ローマスパイダーのそれは群を抜いている。

この点は海外の試乗機会でも感じていたことだが、世間的には大票田の911カブリオレやメルセデスのSLとも真っ向勝負できる、そのくらいの柔軟性が実現できていることには素直に驚かされた。それらとは装備的な遜色もほとんどないわけで、オープンカーでマウントを取りたい向きにとって、ローマ・スパイダーは究極の選択肢ともなり得る存在だと思う。

走りは看板に偽りなし

試乗時の天候は季節外れの寒さで、場所によっては路面が白むほどの悪環境だった。そんな突然現れるスリッパリーな状況でもスロットルやブレーキのコントロール性が高いこともあって、速度調整が微細に行える。街中をゆるゆると走っては停まり、駐車場に出し入れしたり……と、そういった場面では取り回しやすさや扱いやすさとして実感できることだろう。

走りに関しては看板に偽りはない。加減速の荷重移動や操舵応答性はクイックながらもナチュラルだ。アクセルオンでリアを軽く沈めながらのFRらしい姿勢でのコーナリングにニヤニヤしてしまうのは僕だけではないだろう。

スパイダーなら、前方からのV8サウンドを特等席で堪能できる。
スパイダーなら、前方からのV8サウンドを特等席で堪能できる。    山本佳吾

コーナリングスピードなどの極限性能は(フェラーリ)296シリーズに譲るかもしれないが、速度域を問わない楽しさの幅という点ではローマの側に軍配が上がりそうだ。しかもスパイダーなら、前方からのV8サウンドを特等席で堪能できるという美味しいオマケもついてくる。

フェラーリに必要なのはスピードだけではない。五感に響く美や快楽への期待値もどこよりも高いブランドだ。そのフェラーリがスーパーカー市場の拡張と歩を揃えてローマをリリースしたのは自然な流れなのだと思う。

価格的にはエントリーモデルのように思われるかもしれないが、それだけではない。より成熟した嗜好、たとえばフェラーリのある生活をさらりと気楽に愉しみたいという向きや、幾台ものフェラーリを乗り継いできて終の1台を探しているという向きにも、これ以上の選択肢はないだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渡辺敏史

    Toshifumi Watanabe

    1967年生まれ。企画室ネコにて二輪・四輪誌の編集に携わった後、自動車ライターとしてフリーに。車歴の90%以上は中古車で、今までに購入した新車はJA11型スズキ・ジムニー(フルメタルドア)、NHW10型トヨタ・プリウス(人生唯一のミズテン買い)、FD3S型マツダRX-7の3台。現在はそのRX−7と中古の996型ポルシェ911を愛用中。
  • 撮影

    山本佳吾

    Keigo Yamamoto

    1975年大阪生まれ。阪神タイガースと鉄道とラリーが大好物。ちょっとだけ長い大学生活を経てフリーターに。日本初開催のWRC観戦をきっかけにカメラマンとなる。ここ数年はERCや欧州の国内選手権にまで手を出してしまい収拾がつかない模様。ラリー取材ついでの海外乗り鉄旅がもっぱらの楽しみ。格安航空券を見つけることが得意だが飛行機は苦手。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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