徹底的で究極的 BMW M3 コンペティションへ試乗 豪快な直6ツインターボ 許容力を増す4WD

公開 : 2025.04.24 19:05

期待通り豪快な直6ツインターボ 乗り心地は硬い

公道へ出てみれば、3.0L直6ツインターボは期待通りに豪快。低域で僅かにターボラグを感じるものの、それ以降は極めてリニアで、フラットなトルクの波に乗れる。高域で炸裂する感じも痛快だ。

英国仕様のトランスミッションは、シャープな変速を叶えるデュアルクラッチではなく、市街地でスムーズなトルクコンバーター式の8速オートマティックのみ。とはいえ、最新のデュアルクラッチも制御は優秀で、充分にマナーは優れるが。

BMW M3 xドライブ・コンペティション(英国仕様)
BMW M3 xドライブ・コンペティション(英国仕様)

モードを問わず、発進時の反応は迅速。サウンドは、回転が上昇しても若干ザラついたままだ。

ブレーキは、コンフォート・モード時で少し制動力を調整しにくい。スポーツ・モードを選ぶとペダルの感触が硬くなり、エネルギッシュなエンジンとバランスする。

乗り心地は基本的に硬め。最もソフトなモードでも、タイトな姿勢制御が重視されている。スポーツ・モードとの衝撃吸収性の差は、殆どないほど。むしろ、こちらの方が上下動が抑えられ、落ち着いて感じる場面もある。

アルファ・ロメオジュリア・クアドリフォリオは、低めの速度域でも滑らかに駆け抜けられるが、M3 コンペティションの速度域は高め。実際にその領域へ踏み入れれば、精緻で漸進的な操縦性が顕になる。このクラスのベストだ。

驚くほど親しみやすいRWD 許容力を増す4WD

限界領域でも挙動は予想しやすく、アクセルペダルの加減でコーナリングスタンスの調整は自在。ステアリングは適度に軽く正確で、安定感を伴う。手のひらに伝わる路面の感触は薄いものの、シャシーがタイトで、全身でM3を理解できる。

RWDモードも、驚くほど親しみやすい。ATの段数とアクセルペダルの角度、舵角と速度のバランスを探りやすく、どんな曲率のカーブでもドリフトへ興じれる。ドリフトアナライザーが備わり、ドライバーの技術を5段階で評価もしてくれる。

BMW M3 xドライブ・コンペティション(英国仕様)
BMW M3 xドライブ・コンペティション(英国仕様)

リニアなパワー感に把握しやすいトラクション、鋭いステアリングとデフが相乗し、操縦のしやすさは傑出。リカバリーもしやすく、極めてドライバーへの訴求力は高い。先代のM4のように、不意に驚かされることもない。

条件の厳しい公道では、四輪駆動システムが威力を発揮。特に4WDスポーツ・モードは、後輪駆動らしい操縦性を維持しつつフロントへトルクが割り振られ、落ち着きに唸らされる。ステアリングホイールを通じて、トルク変化が伝わることもない。

四輪駆動化で、楽しさが一層増したとはいえない。しかし、許容力が広がることは間違いない。真冬の北の地方でも日常的に運転できる、秀抜なスーパーサルーン/ワゴンだという説得力へ共感する人は多いはず。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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