飛行機メーカーがルーツ 生粋のスウェーデン車:サーブ900(1) 安全性は世界最高水準

公開 : 2025.05.18 17:45

航空機メーカーがルーツで、北欧の匂いが強いサーブ900 肉厚な鋼板でプレスされた高耐久ボディ 世界最高水準の衝突安全性 エンジンはトライアンフの派生版 UK編集部が魅力を振り返る

航空機メーカーがルーツだと感じるクルマ

北欧スウェーデンのクルマと聞いて、真っ先に思い浮かぶのはボルボかもしれない。特有の雰囲気を備え、現在も上級ブランドの1つとして確固たる支持を集めている。

他方、今はなきサーブも忘れないで欲しいという根強いファンはいらっしゃるはず。スウェーデン空軍の航空機を製造する企業として1937年に創業し、トラック・メーカーのスカニアを買収。乗用車部門は、1945年に誕生している。

サーブ900 i(1978〜1993年/英国仕様)
サーブ900 i(1978〜1993年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

親会社を共有する傘下が、飛行機と自動車を手掛けることには一長一短がある。一般的に、自動車の設計や品質でプラスの面を与えるケースは少ない。しかしマーケティングでは、高度な技術をイメージさせる航空機が利用されることは少なくない。

ところがサーブのクルマの場合、航空機メーカーがルーツにあることを感じ取ることができた。同社初の量産車となった、丸みを帯びた92の頃から。この特徴は、1970年代後半に登場した900で、頂点を迎えたといっていい。

北欧の匂いが強い生粋のスウェーデン車

初代900は、1960年代後半に発売された99の進化系といえ、スタイリッシュなデザインをまとい大成功。2代目へ交代する1993年までに、計90万8810台が生産されている。

同時期のボルボは、直線基調の整ったスタイリングに優れた安全性を叶えた、240シリーズをヒットさせた。ミッドセンチュリーなアメリカの香りを、ほのかに漂わせて。

サーブ900 i(1978〜1993年/英国仕様)
サーブ900 i(1978〜1993年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

かたやサーブは、生粋のスウェーデン車といって良かった。サウナや生魚を食べるスカンジナビアン・ライフと同じくらい、北欧の匂いが強かった。人口密度の低い、過酷な自然環境で本来の性能を発揮でき、頼れる信頼性が重視されていた。

ボルボも安全性を強みとしたが、時には無骨な真面目さが茶化される場合もあった。240シリーズに与えられたデイタイム・ランニングライトは、戦車のようだと指摘されることもあった。デイライトは、900にも備わったが。

肉厚な鋼板でプレスされた高耐久ボディ

サーブは、92の頃から前輪駆動を採用している。フロントアクスルにかかる重さは車重の6割ほどあり、雪道での安定性や走行性能を確保するのに、望ましい駆動方式だった。

1988年式までは、必要に応じてフロント側にも効かせることができた、サイドブレーキもその1つ。簡易的なリミテッドスリップ・デフ、と表現する人もいた。

サーブ900 i(1978〜1993年/英国仕様)
サーブ900 i(1978〜1993年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

高品質・高耐久なボディは、一般的な同クラスのモデルより肉厚な鋼板でプレスされ、衝突時は漸進的に変形。バンパーやフロント周りには、衝撃を吸収する部材が組み込まれていた。

フロア部分にはクロスメンバーが与えられ、キャビン周辺の強度を確保。衝突安全性を可能な限り高めた900は、交通事故での生存率へ感心が高まりつつあったアメリカで、強い共感を集めることになった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

生粋のスウェーデン車:サーブ900の前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事