史上最大のモーリス:アイシス・トラベラー タクシーで活躍:600 ムルティプラ お国柄丸出しワゴン(1)

公開 : 2025.06.01 17:45

タクシーとして活躍した600 ムルティプラ

チャーミングなアイシス・トラベラーの1年後にデビューしたのが、フィアット600 ムルティプラ。デザイン哲学の大きな違いに、感心せずにいられない。今回の車両はトミー・セローネ氏がオーナーで、1964年式の極めて珍しい右ハンドルだ。

サルーンのフィアット600をベースに、「オール・サービスカー」として1956年のベルギー・ブリュッセル・モーターショーで発表されたのが、600 ムルティプラ。全長は約250mm伸ばされ、実用性の高さからイタリアではタクシーとして活躍した。

フィアット600 ムルティプラ(1956~1966年/英国仕様)
フィアット600 ムルティプラ(1956~1966年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

車内はベンチシートの2列構成で、定員は最大6名。前後の背もたれを倒し、ダブルベッドにすることもできた。後席側は、折り畳める2脚の独立シートも指定できた。

エンジンは、当初633ccの直列4気筒だったが、1960年に25psの767ccへ拡大。生産は1966年まで続き、フィアット850 ファミリアへ後を譲っている。

型破りなほど個性的なスタイリング

当時のフィアットは、英国で「このクラスでここまで多用途なモデルは他にありません」と主張。1961年には起業家のトム・シルベスター氏がタクシー用に25台を発注するが、ロンドンのブラックキャブ・ドライバーから怒りを買ったことで、話題を集めた。

それでも、英国で売れた600 ムルティプラは100台以下。価格は653ポンドと高くはなかったが、個性的なスタイリングが、型破りに映ったからだと考えられる。また47ポンドお安く、モーリス・マイナー・トラベラーを選ぶこともできた。

フィアット600 ムルティプラ(1956~1966年/英国仕様)
フィアット600 ムルティプラ(1956~1966年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

600 ムルティプラを注文した数少ない英国人は、その実用性に驚いたはず。背の高い帽子を被ったまま座ることが前提にあり、車内は広々。リアシートを折りたためば、広大な荷室を生み出せた。

この続きは、お国柄丸出しワゴン(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・ロバーツ

    Andrew Roberts

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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