むしろ魅力なチープさとアンバランスさ ポンティアック・グランプリ(2) 5.8L V8でも162ps!

公開 : 2025.06.22 17:50

高級クーペが希望の光になった、1970年代の北米市場 非力なV8エンジンに優雅な馬車を意識したデザイン チープさとアンバランスさが魅力 ロンドンでも想像以上に身軽 UK編集部が巨大アメリカンをご紹介

全長5486mm 5.8L V8の最高出力は162ps

ブランドのフラッグシップクーペとして、1973年の4代目ポンティアック・グランプリに載ったエンジンは、6.6Lか7.5LのV型8気筒。後者は初年度に253psを発揮したが、環境規制へ対応した1976年には、202psへ落ちていた。

同時期に、6.6Lエンジンは5.8Lへサイズダウン。1977年には4.9L V8が追加されるが、最高出力は136ps。全長5486mm、全幅1829mmという恰幅の良いボディを動かすのに、力不足は否めなかった。

ポンティアック・グランプリ(4代目/1973〜1977年/英国仕様)
ポンティアック・グランプリ(4代目/1973〜1977年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

速いクーペではなかったが、操縦性の向上には努力が向けられた。特にラジアルタイヤを前提としたフロントサスペンションは、ポンティアック・ファイアーバード譲り。もっとも、実際にラジアルタイヤが組まれたのは1974年式からだが。

今回のグランプリは、英国へ少数が正規輸入された1976年式。スタイリングは、全体的にはバランスが良い。5.8Lで162psを発揮する、ベースユニットを積んでいる。

オリジナルのままの塗装や内装 走行5万9500km

販売したのは、西ロンドンに拠点を置く、レンドラム&ハートマン社。ゼネラル・モーターズのクルマを専門に扱った代理店で、当時はキャデラック・セビルやシボレーコルベットなども提供していた。

現在のオーナーは、ロンドンに住む紳士、マーリン・マコーマック氏。2023年末に初代オーナーから譲り受けたそうで、走行距離は5万9500kmと浅い。「前オーナーは若い頃に購入して、以来ずっと乗り続けてきたようです」。と説明する。

ポンティアック・グランプリ(4代目/1973〜1977年/英国仕様)
ポンティアック・グランプリ(4代目/1973〜1977年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

「彼が売却を決めた理由は、クルマのために作ったガレージを取り壊すことになったから。エアコンに除湿機、充電器など、環境は整っていたと聞いています。メルセデス・ベンツの整備士として働いてきた人物で、これも最高水準で維持されていました」

ダーク・グリーンの塗装は、オリジナルのまま。ベージュ・コーデュロイのインテリアも同様だという。メーターパネルはドラバーを包むように湾曲し、クッションを重ねたようなシートは分割式のベンチ。フロアは、毛足の長いカーペットで覆われている。

チープさとアンバランスさが、むしろ魅力

フェイクレザーのルーフと、リアピラー部分のオペラウインドウ、複雑な造形のフロント周りは、いかにもこの年代のパーソナル・ラグジュアリークーペ。ちょっとチープで、少しのアンバランスさが、むしろ魅力を醸し出す。

ワイパーは目立たない位置へ組まれ、給油口はナンバープレートの裏に隠されるなど、見た目への配慮も数多い。ボンネットの下には、縦横無尽に巡らされた配管へ飲み込まれるように、キャブレターを載せたV8エンジンが収まる。

ポンティアック・グランプリ(4代目/1973〜1977年/英国仕様)
ポンティアック・グランプリ(4代目/1973〜1977年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

英国仕様らしく、エアコンにエアロミラーなど、装備は充実。シフトレバーは、コラムで標準のまま。フェイクウッドのダッシュボードには、ラジアルチューンド・サスペンションと刻まれたバッジが付く。

リアシートは、ボディサイズほど広くはないが、大人でもくつろげる。インテリアデザイナーは、苦労なしに広い車内空間を確保できたはず。荷室の3割はスペアタイヤが占めているが、誰かを誘拐するのに困らない余地はある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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