ベントレー・スピードシックス(2) 豪華客船のようにシームレス 滲み出るカリスマ性

公開 : 2025.08.02 17:50

アメリカン・ボディのベントレー ル・マン勝利に向けて生まれたスピードシックス ライバルと一線画す直6エンジン オーナーのカリスマ性が滲み出る存在感 UK編集部が無二のリムジンをご紹介

ホワイトウォールがアメリカンな雰囲気

初代オーナーだった、ルース・ヴァンダービルト・トゥオンブリー氏は、ベントレー・スピードシックスを1940年に手放し、オーストラリア駐米大使官だったリチャード・ガーディナー ・ケーシー氏が購入。その後間もなく、同僚へ譲られる。

1945年に、ウィスコンシン州のカール・ミューラー氏が600ドルで買い取り、31年間も維持したが、殆ど乗らないまま1976年に死去。知人のフレッド・ベルント氏が譲り受けると、ボディとインテリアがレストアされた。

ベントレー・スピードシックス・チャールズ・シュッテ(1930年/北米仕様)
ベントレー・スピードシックス・チャールズ・シュッテ(1930年/北米仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

ボディはシルバーとブルーへ塗り替えられ、今でもその配色は保たれている。ヘッドライトは、当初のルーカス社製P100からマーシャル社製へ、バンパーはシンプルなものへ変更。内装は、前席側をレザーへ張り替え、後席側はクロスで仕立て直された。

タイヤは、1970年代を表すようにホワイトウォールが選ばれており、アメリカンな雰囲気が醸し出されている。その後、1981年にグレートブリテン島へ再上陸。レイトン・ロバーツ氏が購入し、現在のオーナーは彼の息子だ。

オーナーのカリスマ性が滲み出る存在感

チャールズ・シュッテ社のサルーンボディは、寸法に関する記録が残っていない。だが、ベントレーのシャシーは長さが約4.4m、幅が約1.7mあり、それ以上大きいことは間違いない。

トランクがなく、リアのホイールアーチ後方は切り落とされたように短いが、威風堂々とした存在感に溢れる。初代オーナーのカリスマ性が、滲み出ているようでもある。

ベントレー・スピードシックス・チャールズ・シュッテ(1930年/北米仕様)
ベントレー・スピードシックス・チャールズ・シュッテ(1930年/北米仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

ショーファードリブン・リムジンらしく、後席は太いリアピラーの影。クッションの厚い、ベンチシートへゆったり座れる。前席側との間には、ガラス製のパーティション。ピラー部分にインターホンが備わり、閉じたまま運転手と話すこともできる。

パーティション上部には、小さな時計。フロアにはカーペットが敷かれ、サイドウインドウのワインダーはクローム仕上げ。オーナーが女性だったことを物語るように、香水を入れる瓶が2本、車内を彩る。

豪華客船のようにシームレスな走り

運転席側では、ブルーメル社製ステアリングホイールが中心的存在。巨大なハブ部分から、点火時期と燃料の混合比、スロットルのレバーが3本伸びる。ダッシュボードはマホガニー材で作られ、6枚のメーターがスイッチ類とともに所狭しと並ぶ。

25ガロン(約110L)入るタンクの燃料計は、運転席の正面。ラジエターキャップの上には、美しい「B」の特注マスコット。レバーを回し点火時期を僅かに遅らせ、混合気を調整しながら、スターターボタンをひと押し。6.6Lエンジンが直ぐに目覚める。

ベントレー・スピードシックス・チャールズ・シュッテ(1930年/北米仕様)
ベントレー・スピードシックス・チャールズ・シュッテ(1930年/北米仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

極めて静かなアイドリングが始まる。低速域でも、タコメーターを見ないとエンジンが掛かっているのか分からないほど。右膝の横に、Hパターンのシフトレバーが伸びている。1番右がアクセルというペダル配置とともに、簡単に馴染める。

シフトレバーは重い。ダブルクラッチを踏み、回転数を必要なだけ落とせば、変速は滑らか。トルクが太く、2000rpm以下でも悠々と先を急げるが、少し積極的に変速すると、豪華客船のようにシームレスに路上を突き進みだす。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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