【気になる日本導入モデル】スバルが今なぜEVラッシュ?トレイルシーカーに次いで、アンチャーテッド導入も急ぐ理由

公開 : 2025.07.21 11:45

スバルは新型EV『アンチャーテッド』をニューヨークで発表しました。新型『ソルテラ』と新モデル『トレールシーカー』発表からわずか3ヵ月前後となります。果たしてスバルが導入を急ぐ理由とは? 桃田健史の分析です。

3ヵ月前にもニューヨークで初披露

「なんだ、このEV?」。スバルが米ニューヨークから発信した新型EV『アンチャーテッド』ワールドプレミアのニュースを見て、驚いた人が少なくないだろう。

なぜならば、この3ヵ月前には、新型『ソルテラ』と新モデル『トレールシーカー』という2台のEVをニューヨーク初で初披露しているからだ。

今回スバルが発表した新型EV『アンチャーテッド』。
今回スバルが発表した新型EV『アンチャーテッド』。    スバル

最近、グローバルで『EVは踊り場』と言われるように、欧州では欧州グリーンディール政策の見直しが停滞、またテスラについてはイーロン・マスク氏の政治的な発言などの影響もあり欧米での販売に影響が出ているところだ。

そして、アメリカではトランプ関税の影響で新車価格が全般的に上昇するとの懸念があり、EV政策については政府として今後の道筋が不透明な情勢だ。

そんな時期に、しかもスバルがなぜEVモデルラインナップを一気に拡充しようとしているのか、不思議に思う人がいるだろう。

だが、スバルはけっして、EV市場の動向に対する見当違いをしているわけではない。あくまでも既定路線にのっているだけだ。

スバルは2023年8月2日、大崎篤社長が率いる『新経営体制における方針』を公開し、その中で電動化戦略についても説明した。直近では、2024年11月1日に『ビジネスアップデート』を公表している。

その中で、スバルの本拠地である群馬県太田市の3工場での生産計画があり、それを見ればスバルが自社生産するEVの計画が見て取れる。それとは別に、今回立て続けんい発表された『アンチャーテッド』や『ソルテラ』などトヨタが生産するEVモデルがあるわけだ。

日本市場で導入するモデルとは?

群馬県太田市のスバル本工場では、ストロングハイブリッド搭載車とガソリン車を生産。矢島工場ではガソリン車、ストロングハイブリッド車に加えて、EVを生産するとしている。

スバルのこれまでの動きから見て、矢島工場で生産されるのはトレイルシーカーになると予想される。一方で、新たに構える大泉工場では立ち上げ期はEV専用ラインとするものの、将来的には他の電動車を混流を視野に入れるという。

アンチャーテッドとはきょうだい車となるトヨタの『C-HR+』(欧州仕様)。
アンチャーテッドとはきょうだい車となるトヨタの『C-HR+』(欧州仕様)。    トヨタ自動車

大泉工場から、約1km先にEV用バッテリー工場をパナソニックエナジーと協業で建てる計画だ。生産するのは円筒式リチウムイオン電池で、基本スペックはマツダが自社EVで搭載するものと同じ。このスバル独自EVについては、現時点で外部に情報は漏れてこない。

これら以外のスバルEVモデル、つまり新型ソルテラとアンチャーテッドは、トヨタ生産となるものと考えられる。

筆者は2023年9月中旬、トヨタの本拠地である愛知県豊田市とその周辺で、トヨタの最新開発や製造について詳しく見た。その際、次世代EV製造に向けた自動搬送システムや、元町工場で混流されているソルテラと『bZ4X』の生産工程も確認している。

ここで、アンチャーテッドと、きょうだい車であるトヨタ『C-HR+』も混流されるのだろうか?

いずれにしても、スバルとしては2030年代以降に加速すると予想されるEVシフトに向けて、既存リソースの活用と投資を効果的かつフレキシブルに行うことが求められる。その過程で、日本導入モデルは自ずと決まるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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