プロトタイプだけの超高性能 ポンティアック・トージャン(2) きっと完成時はドッカンターボ

公開 : 2025.08.17 17:50

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フェラーリ308 GTBに並んだ特別仕様の価格

ゲイル・バンクス氏が組んだ、特別なV8エンジンを積んだポンティアック・トージャンは、この1台しか作られていない。オプションで希望は可能だったものの、価格はフェラーリ308 GTBに並び、二の足を踏ませたのだろう。

ポール・カウランド氏が所有するトージャンはプロトタイプで、1985年にグレートブリテン島へ運ばれ、所在がわからなくなっていた。ところが偶然にも、彼がテレビ番組の撮影で話しかけた人物は、それを購入した男性の息子だった。

ポンティアック・ファイヤーバード(3代目/1982〜1993年/北米仕様)
ポンティアック・ファイヤーバード(3代目/1982〜1993年/北米仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

「素晴らしい話を聞かせてくれました。購入した彼の父は、とても大切にしていたそうです。亡くなって以降、絶対に手放せない気持ちのままだと教えてくれました。でも、念のため名刺を渡したんですよ」

カウランドが続ける。「取材を終えて帰宅する途中、電話が鳴りました。自分がクルマにピッタリの人物だと話してくれて、納得できる価格が提示されたんです。プロトタイプだったことは、その時点では知りませんでした」

少し放っておいても復活できるアメリカ車

レッドのトージャンには、デモ車両としてほぼすべてのオプションが盛り込まれていた。ゴッティ社製のアルミホイールに、LCD式のメーターなど。

約50台のカーコレクションを保有するカウランドだが、運転は難しいという。「ようやく、クルマのことを理解してきた感じです。今買わなければ二度と手に入らないという強迫観念で、コレクションは増えてしまうんですよね」

ポンティアック・トージャン・ツインターボのオーナー、ポール・カウランド氏
ポンティアック・トージャン・ツインターボのオーナー、ポール・カウランド氏    マックス・エドレストン(Max Edleston)

彼が購入してからも、4年間ほど放置されていたらしい。「アメリカ車は、少し放っておいても復活できる点が好きですね。ブレーキフルードの交換など、簡単な整備で再び走るようになる場合が殆どです」

1985年にはドッカンターボを味わえたはず

ジャンプケーブルをつなぎ、トージャンのV8エンジンを始動。アクセルペダルを軽く踏むだけで、2つのヘッドが左右に揺れる。ターボチャージャーの唸りはなく、ブローオフバルブの悲鳴も聞こえない。

カウランドの話では、ターボブーストは本域まで上昇しないという。「完成直後には、高品質な鍛造部品が多用されていたはずですが、どこかの段階でのリビルド時に、質の悪い部品で代用されたんじゃないでしょうか」

ポンティアック・ファイヤーバード(3代目/1982〜1993年/北米仕様)
ポンティアック・ファイヤーバード(3代目/1982〜1993年/北米仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

アクセルペダルを踏み込んでも、ダッシュボードのブースト計は大きく変化しない。ボートの場合は、基本的に高域で回り続けるため、ターボラグは問題にならない。大径だから、ブースト圧を充分に高めるのに、そもそも相当な時間が必要だろう。

恐らく1985年の時点では、強力に打ち出されるドッカンターボを味わえたはず。「本来の状態へ戻すのに、どれくらい費用がかかるんでしょうね」。彼がつぶやく。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ポンティアック・トージャンの前後関係

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