世界初の330km/h超モデル? ポンティアック・トージャン(1) ハイオク注げば900馬力

公開 : 2025.08.17 17:45

ファイヤーバードがベースのスーパーカー、トージャン ハイオクで900psのV8ツインターボ 331km/hに達した?プロトタイプ 走りは最高状態のトランザム UK編集部が貴重な1台をご紹介

ファイヤーバードがベースのスーパーカー

「ラッセル・クヌーセンさんとお会いした時、時速206マイル(約331km/h)なんて嘘じゃないか、って伝えたんですよ」。テレビ番組の司会者で、1985年式ポンティアック・トージャンのオーナー、ポール・カウランド氏は笑う。

「225km/hを超えると、驚くほど揚力が生まれるんです。でも彼は、243km/hを超えると元通りになるんだと、答えていました」。ちなみに、F40の最高速度が時速200マイル(約321km/h)を超えたと、フェラーリが公式に発表したのは1987年だ。

ポンティアック・トージャン・ツインターボ(プロトタイプ/1985年/北米仕様)
ポンティアック・トージャン・ツインターボ(プロトタイプ/1985年/北米仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

1970年代後半に創業したクヌーセン・オートモーティブ社は、ゼネラル・モーターズ(GM)のGボディ・プラットフォームをベースに、クラシックカーのボディを架装。バロック・モーターカーズというブランドを立ち上げ、ある程度の成功を収めていた。

1980年代に入ると、少量生産のスーパーカーに需要があると判断。3代目ポンティアック・ファイヤーバードをベースにしたトージャンを開発し、受注生産で提供を始めた。

トージャンを公式に支援したGM ボディ後半は別物

面白いことに、GM側はトージャンを公式に支援した。一部のディーラーでは、ファイヤーバードと並んで販売されたほど。トランザムやフィエロを擁したポンティアックは、スポーティな位置付けにあり、イメージリーダーになる可能性を期待したのだ。

ファイヤーバードへボディキットを組んだ姿に見えるが、実際はフロントピラーから後方が大きく作り変えられている。スタイリングは、GMでデザイナーだった経験を持ち、初期のホットホイールを手掛けた、ハリー・ベントレー・ブラッドリー氏が担当した。

ポンティアック・ファイヤーバード(3代目/1982〜1993年/北米仕様)
ポンティアック・ファイヤーバード(3代目/1982〜1993年/北米仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

アメリカ中部のネブラスカ州に住むクヌーセンは、東部のカリフォルニア州を拠点とするブラッドリーと、数か月をかけてデザインを練った。現代的で斬新な姿を目指し、クヌーセンもスケッチへ加筆したという。

フロントグリルは、トージャンの2年後に発売されたA70型トヨタスープラに似ており、流れを先取りした処理といえる。リア周りはデ・トマソ・パンテーラの影響を隠さない。パネルは肉厚なFRP製で、ドアの隙間は均一に揃い、製造品質は高い。

希望へ応じ多様なアップグレードへ対応

サスペンションは、フロント側を大幅に改良。アライメントも変更され、トレッドが広げられた。ホイールのインセットも見直され、シャープな回頭性が目指されている。

ダンパーとスプリングは、トランザム用のWS6パッケージが標準になった。これには、クイックなレシオのステアリングにハードなアンチロールバー、リミテッドスリップ・デフ、前後のディスクブレーキが含まれていた。

ポンティアック・トージャン・ツインターボ(プロトタイプ/1985年/北米仕様)
ポンティアック・トージャン・ツインターボ(プロトタイプ/1985年/北米仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

顧客の希望に応じ、多様なアップグレードにも対応。オプションは幅広く、ランボルギーニカウンタックのようなリアウイングを装備した例も存在する。合計136台が作られたが、これが素の状態というトージャンは存在しない。

エンジンは、5.0L V8気筒「クロスファイア」か、5.7L V8の「L98ユニット」が一般的なチョイスだった。しかし今回のトージャンには、遥かに特別な逸品が載っている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ポンティアック・トージャンの前後関係

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