咆哮へ思わず微笑む 4代目 アウディRS3(2) 操縦性も高次元 5気筒エンジンだけじゃない訴求力

公開 : 2025.08.20 19:10

ユーロ7延期で生き残った2.5L 5気筒ターボ 追加された赤いショートカットボタン 思わずニヤける特徴的な咆哮 フロントヘビーを殆ど感じない回頭性 硬い乗り心地という妥協 UK編集部が試乗

速くて当然 思わず微笑む5気筒らしい咆哮

バッテリーEVのご紹介が続く最近だから、1619kgというアウディRS3の車重は軽く感じられてしまう。実際、メルセデスAMG A 45 Sより40kgほど軽い。ここに400psの最高出力と四輪駆動システムが備わるのだから、速くて当然だろう。

ローンチコントロールを機能させると、スリップを最小限に留めつつ、7速デュアルクラッチATが容赦なくシフトアップを重ね、0-100km/h加速を3.8秒でこなす。2.5Lターボエンジンからは、思わず微笑んでしまう5気筒らしい咆哮が放たれる。

アウディRS3 スポーツバック・カーボン・フォアシュプルング(英国仕様)
アウディRS3 スポーツバック・カーボン・フォアシュプルング(英国仕様)

速さもさることながら、RS3が持つ訴求力の中心にあるのはエンジン自体。次世代まで延命を決めたアウディへ、感謝状を贈りたくなる。特に、3000rpm以上でのエッジーな響きは唯一無二。回転数の上昇とともに増す、パワー感にも魅了される。

他方、7速デュアルクラッチATは、許容トルクの限界へ近いのかもしれない。稀にクラッチが滑るような仕草があり、変速が鈍く感じられる場面もある。高速でカーブを巡っている時などは、もう少し鋭くギアが切り替われば、と思ってしまう。

意欲的な旋回 フロントヘビーはほぼ感じず

操縦性は、トルクスプリッター機能が威力を発揮し、FFベースの四輪駆動ホットハッチと思えないほどエネルギッシュ。フロントヘビーな車重バランスを、殆ど感じさせない。

リアより幅広なフロントタイヤと、可変レシオのステアリングラック、トルクベクタリングなども相乗し、好ましいバランスが生まれている。ブレーキも、見事な制動力を発揮する。オプションで、更に強力なカーボンセラミックを奢ることも可能だ。

アウディRS3 スポーツバック・カーボン・フォアシュプルング(英国仕様)
アウディRS3 スポーツバック・カーボン・フォアシュプルング(英国仕様)

コーナリングは、胸がすくほど意欲的。頂点が迫る前にアクセルペダルを踏み込んでも、吸い込まれるように回頭していく。右足の加減でラインを内側へ絞ったり、オーバーステア気味にリアを振り出すことも造作ない。

絶対的なバランスは高次元なFRに届かなくても、充足度は高い。興奮を得るのに、全開で気張る必要もない。旋回中に右足を倒し切ると、ノーズの重さを実感するとはいえ。

硬い乗り心地は動力性能と操縦性への妥協

可変レシオのステアリングは、ロックトゥロックが2回転以下。徐々に反応がクイックになる制御へ、多少の慣れは必要かもしれないが、適度なフィードバックが好ましい。

乗り心地は概ねしなやかながら、サスペンションは、舗装の剥がれた穴などは苦手なようだ。英国の傷んだアスファルトでは、稀にダンパーの能力が追いつかなくなる様子。3段階から減衰力を選べ、最も柔らかい状態が一般道との相性に優れる。

アウディRS3 スポーツバック・カーボン・フォアシュプルング(英国仕様)
アウディRS3 スポーツバック・カーボン・フォアシュプルング(英国仕様)

大きな凹凸では、サスペンションのストロークが不足気味で、落ち着きに欠けてしまう。大きなホイールも、影響しているはず。際立つ動力性能と鋭い操縦性を得るための、妥協ともいえる。

走行音は小さくない。高速道路では、通常のA3より明らかに車内はうるさい。能力の高さを考えれば、控えめな方だとはいえ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

4代目 アウディRS3の前後関係

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