生き残った5気筒ターボ 4代目 アウディRS3(1) ワイドフェンダーが包む傑出ハードを略説

公開 : 2025.08.20 19:05

ユーロ7延期で生き残った2.5L 5気筒ターボ 追加された赤いショートカットボタン 思わずニヤける特徴的な咆哮 フロントヘビーを殆ど感じない回頭性 硬い乗り心地という妥協 UK編集部が試乗

ユーロ7延期で生き残った2.5L 5気筒ターボ

計画通りなら、このアウディは存在しないはずだった。8Y系となる4代目RS3は、A3がアップグレードを受ける段階で、ラインナップから落ちる予定だった。ユーロ7と呼ばれる次世代の排気ガス規制へ、2.5L 5気筒ターボエンジンが適合しないから。

しかし、その施行は延期。多少の改良で、最新のユーロ6規制へ対応可能だとわかった。英国での価格は目が飛び出るほどお高いものの、同社のイメージリーダー的存在として、2025年でも需要は小さくないようだ。

アウディRS3 スポーツバック・カーボン・フォアシュプルング(英国仕様)
アウディRS3 スポーツバック・カーボン・フォアシュプルング(英国仕様)

プラットフォームは、フォルクスワーゲン・グループのMQB。A3では1.5L 4気筒エンジンが載る場所に、5気筒ターボが横向きで押し込まれている。新しい触媒とともに。

トランスミッションは、7速デュアルクラッチ。通常は前輪駆動だが、ECUが必要だと判断すると湿式多板クラッチが繋がり、後輪へも最大50%までトルクが伝わる。リアデフもクラッチ制御で、片方のリアタイヤへ、その50%のすべてを割り振ることができる。

フレアしたフェンダー フロントが太いタイヤ

フェイスリフトで、フロントグリルやバンパーのデザインはリフレッシュ。4リングスの位置は、僅かに上方へ移動した。リアはディフューザーが大きくなり、その中央でテールライトが縦に伸びる。ボディトリムは、ブラックかカーボンで統一される。

フレアしたフェンダーへ収まるアルミホイールは、19インチのクロススポークが標準。1990年代前後に流行した、BBS風のデザインで筆者は好きだ。

アウディRS3 スポーツバック・カーボン・フォアシュプルング(英国仕様)
アウディRS3 スポーツバック・カーボン・フォアシュプルング(英国仕様)

タイヤは、通常はピレリ Pゼロ Rが組まれるが、オプションでセミスリックのようなトロフェオ Rも指定可能。フロントの方がリアより太いという、珍しいセットになる。

標準のPゼロ Rでもグリップ力は素晴らしく、先述のリアタイヤの駆動力を操るトルクスプリッター機能と相まって、鋭いコーナリングを実現。オーバーステアを抑えつつ、荷重移動によるラインの調整しろも拡大されている。

ステアリングに追加された赤いショートカット

インテリアは、最新のA5やA6とは異なり、1世代前のデザイン。タッチモニターは備わるが、実際に押せるハードボタンも多数残されている。送風口の形状やマットカーボン・トリム、概ね質感の高い素材など、印象はとても良い。

ステアリングホイールには、ドライブモードとRSモードを1発で選べる、レッドのショートカットが追加された。リムは握り心地に優れるものの、上下が直線状で完全な丸ではなく、ヘアピンカーブなどでは回しにくいと感じるかも。

アウディRS3 スポーツバック・カーボン・フォアシュプルング(英国仕様)
アウディRS3 スポーツバック・カーボン・フォアシュプルング(英国仕様)

通常のフロントシートは、横方向のサポート性がいまひとつながら、調整域が広く運転姿勢と座り心地は望ましい。着座位置は低めだ。オプションで、RSバケットシートも指定できる。サーキットでの走行をお考えなら、検討に値するだろう。

後席側のドアパネルは、硬質なプラスティックが露出し、前席との格差を感じる。BMW 1シリーズより広くはないが、エアコンの送風口とUSBポートは備わる。荷室も、より広いライバルは存在する。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

4代目 アウディRS3の前後関係

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