【連載:清水草一の自動車ラスト・ロマン】#16 赤いヒモはどこに!?

公開 : 2025.08.15 12:05

給油できないじゃん!!

なにしろ大貴族号は燃費が悪い。首都高ではリッター9キロをマークしたが、一般道ではリッター3キロ。トータルでせいぜい5キロである。まだガソリンは3分の1くらい残っているが、箱根のワインディングでフェラーリV8をブチ回したら、超速でカラッポになりそうだ。

私は、箱根ターンパイクの待ち合わせ場所で、給油口を開ける予行演習をした。転ばぬ先の杖は、冒険家の基本である。

大貴族号の取扱説明書(新品)を引っ張り出し、赤いヒモのありかを確認!
大貴族号の取扱説明書(新品)を引っ張り出し、赤いヒモのありかを確認!    清水草一

ボタンを押す。

あれ、開かない。

もう一度押す。

やっぱり開かない! ゲエッ、給油できないじゃん!!

そう言えば納車日、タコちゃん(マイクロ・デポ岡本和久代表)が、「給油口のバネが死んでたので、テキトーなバネかませときました」と言っていた。あの日はちゃんと開いたけど、テキトーなバネが早くも逝ったのか?

そうだ、開かない時は、トランクにある赤いヒモを引っ張れと言われたっけ。赤いヒモはどこ?

どこにも見当たらない。

私は大貴族号の取扱説明書(新品)を引っ張り出し、赤いヒモのありかを確認。トランク左側のフタを開けた奥のほうに隠れているのを手探りで発見し、それを引っ張って給油口を開けることに成功した。

ホッ。

こんな燃費の悪いクルマで、給油不能じゃすぐ止まっちまう。開いてヨカッタ~。こんなことでドキドキできるのだから、さすがは自動車ラスト・ロマン!

そうこうしているうちに、ヒライ君とカメラマン氏が到着した。いよいよ大貴族号の晴れ舞台、箱根撮影の開始だ。

(つづく/隔週金曜日掲載、次回は8月29日金曜日公開予定)

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    清水草一

    Souichi Shimizu

    1962年生まれ。慶応義塾大学卒業後、集英社で編集者して活躍した後、フリーランスのモータージャーナリストに。フェラーリの魅力を広めるべく『大乗フェラーリ教開祖』としても活動し、中古フェラーリを10台以上乗り継いでいる。多くの輸入中古車も乗り継ぎ、現在はプジョー508を所有する。
  • 撮影

    神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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