【連載:清水草一の自動車ラスト・ロマン】#15 イタリア車の自然治癒力!

公開 : 2025.08.01 12:05

自動車はロマンだ! モータージャーナリストであり大乗フェラーリ教開祖の顔を持つ清水草一が『最後の自動車ロマン』をテーマに執筆する、隔週金曜日掲載の連載です。第15回は『イタリア車の自然治癒力!』を語ります。

納車時から点いていた警告灯!

大貴族号(5代目マセラティクアトロポルテのデュオセレクト)は、自動車ラスト・ロマン。クルマにおけるロマン≒故障の可能性であることは、すでに述べた。

そんな大貴族号が納車されて数日。読者様の間からは、「まだ故障しないのか」、「ロマンはどこに行った」という、催促の声が聞こえてきそうだ。

大貴族号こと、清水草一が購入した5代目マセラティ・クアトロポルテ。
大貴族号こと、清水草一が購入した5代目マセラティ・クアトロポルテ。    平井大介

クルマが故障すると、多くの場合、なんらかの警告灯が点く。警告灯はパトカーの赤色灯同様、文字通りの警告。注意せねばならない。

大貴族号の場合、納車時から黄色い警告灯がひとつ点いていた。それはタイヤ空気圧警告灯だった。

タイヤには空気がたんまり入っているが、警告灯が点いている。当然放置するわけだが、たまにメーター内で警告表示がデカくなり、英語で『タイヤ空気圧が異常なので、ディーラーに行け』と表示される。すごくイヤな気分になる。

そんなことくらいで、マセラティの正規ディーラー様に行けというのかお前は。俺はそんな竜宮城とは、縁もゆかりもないんだよ!

リセット成功! の数秒後

そうだ、タコちゃん(マイクロ・デポの岡本和久代表)がくれた新品未開封の取扱説明書を見てみよう。この取説、新品の証拠にビニールがかかったままだが、そのビニールが経年劣化で崩壊寸前という逸品だ。

崩壊寸前のビニールを引き裂いて、タイヤ空気圧警告灯の項目を見ると、リセットする必要があるらしい。

納車の時点でタイヤの空気圧警告灯は点いたままだった。
納車の時点でタイヤの空気圧警告灯は点いたままだった。    平井大介

そもそも大貴族号のホイールは、6代目クアトロポルテのものに交換されているので、ホイール側に空気圧センサーがついてないのでは? という疑念もあるが、せっかくなので、表面が劣化してベタベタになったスイッチを押してリセットを試みた。

リセット成功!

数秒後、再び警告灯が点灯した。ダメか……。

一応タコちゃんにメッセージを送ったところ、「そもそもセンサーがついてません」という、やっぱり! な返信があった。正直に正規ディーラー様に持って行かなくてよかった。正直者はバカを見る。

数日後。大貴族号を発進させて間もなく、ABSおよびスピン防止装置の警告灯が点灯した。

イタフラ車の警告灯点灯は、多くの場合、センサーの誤作動だ。一旦エンジンを切って再始動すれば消える。

日本車やドイツ車の愛好家の皆様は、「それじゃ警告灯の意味ないじゃん!」と思われるかもしれないが、ドイツ車のように、警告灯が点いたら確実に故障しているのと、再始動で自然治癒するイタフラ車のどっちがいいか、考えてみてほしい。私は断然後者のほうが好きだ。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    清水草一

    Souichi Shimizu

    1962年生まれ。慶応義塾大学卒業後、集英社で編集者して活躍した後、フリーランスのモータージャーナリストに。フェラーリの魅力を広めるべく『大乗フェラーリ教開祖』としても活動し、中古フェラーリを10台以上乗り継いでいる。多くの輸入中古車も乗り継ぎ、現在はプジョー508を所有する。
  • 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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