時代を超越するコンセプト ND型 マツダ・ロードスター(1) 「人馬一体」を叶えた軽いハード

公開 : 2025.06.04 19:05

時代を超越したコンセプトを継ぐ、ND型ロードスター 車重は約1.0t 無駄ない車内空間が新鮮 8.8インチ・モニター獲得 颯爽と回る自然吸気エンジン きめ細やかな操縦性 UK編集部が試乗

時代を超越したコンセプト

小型・軽量なボディにMTで操れる、FRスポーツカーがご希望? 新しいトヨタGR86も素晴らしいが、マツダMX-5(ロードスター)という魅力的な一択もある。

現行のND型は2015年に登場し、10年目を向かえるものの、訴求力はまったく衰えていない。コンセプト自体が、時代を超越したものといえる。マツダがモデルイヤー毎に小改良を重ねて来たことも、輝きを失わない理由だろう。

マツダMX-5(ロードスター) 1.5 プライムライン(英国仕様)
マツダMX-5(ロードスター) 1.5 プライムライン(英国仕様)

ロードスターは1989年の初代、NA型から、ほぼ変わらない特長を備える。その開発時にお手本とされたのは、1970年代のブリティッシュ・スポーツ。MGBやロータスエランという傑作だった。1t以下の車重でFRレイアウト、完璧なバランスが目指された。

NA型は、1つの頂点を1発で打ち立てた。他方、後継世代も優れた走りを披露したが、ボディは成長し、面白さは若干薄れていた。しかし現行のND型は原点回帰。他に例のない、同社が掲げる「人馬一体」を叶えている。

1g単位で重さを意識 車重はほぼ1.0t

エンジンは、1.5Lか2.0Lの直列4気筒・自然吸気「スカイアクティブ-G」。英国仕様は6速MTが標準だが、6速ATも指定できる。2017年にはフォールディング・ハードトップを背負った、ロードスター RFも追加された。

4代目では、驚くことに3代目から全長を33mmも短縮。車重はほぼ1.0tと、NA型に次いで軽い。開発段階では、1g単位で重さを意識。前がダブルウイッシュボーン式、後ろがマルチリンク式のサスペンションにはアルミを採用し、12kgも重量を削ったという。

マツダMX-5(ロードスター) 1.5 プライムライン(英国仕様)
マツダMX-5(ロードスター) 1.5 プライムライン(英国仕様)

エンジンフレームやフロントフェンダーもアルミ製で、前のクロスメンバーやボディには高張力鋼を採用する。後ろのクロスメンバーはトラス構造で剛性を確保しつつ、重心は落とされ、前後の重量配分は50:50と理想値にある。

2024年の小改良では、電動パワーステアリングとスロットルを再調整。2.0L仕様には、加速時と減速時で動作が異なる、新しいLSDも与えられた。トラック(サーキット)・モードや、通常より高度なスタビリティ・コントロールも、仕様次第で実装される。

無駄が削ぎ落とされた空間が新鮮

スタイリングは、10年を経ても美しい。テールライトは初代を彷彿とさせるデザインだが、安っぽさは皆無。2024年にライトの造形へ手が加えられ、新しいアルミホイールが追加され、内装の仕立てが見直された。

インテリアデザインは時間の経過を隠さないが、無駄が削ぎ落とされた空間は、今でも新鮮さが香る。車内空間はタイトで、スリムな体型でない限り、センターコンソールやドアパネルなどに身体が触れてしまうが。

マツダMX-5(ロードスター) 1.5 プライムライン(英国仕様)
マツダMX-5(ロードスター) 1.5 プライムライン(英国仕様)

座面の位置は、NC型から20mm落とされたものの、視点はやや高め。ソフトトップを閉めると、圧迫感もある。右ハンドル車の場合、クラッチペダル付近のフロアに膨らみがあり、左足の置き場には困りがち。

相対的には快適性が高いといえないが、歴代ロードスターで最もくつろげることは事実。とはいえ、長距離移動を頻繁にお考えなら、座り心地の良いレカロシートを選びたい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マレー・スカリオン

    Murray Scullion

    役職:デジタル編集者
    10年以上ジャーナリストとして活動し、雑誌、新聞、ウェブサイトに寄稿してきた。現在はオンライン版AUTOCARの編集者を務めている。オースチンやフェラーリなど、1万円から1億円まで多数のクルマをレビューしてきた。F1のスター選手へのインタビュー経験もある。これまで運転した中で最高のクルマは、学生時代に買った初代マツダMX-5(ロードスター)。巨大なジャガーXJ220も大好き。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事