自動車のメートル原器、マツダ・ロードスター【日本版編集長コラム#50】

公開 : 2025.10.05 12:05

ルーフを閉じた状態が断トツに美しいRF

続いて電動ハードトップを持つモデル、『ロードスターRF』をお借りして乗ったところ、意外にも「うわあ、これかも……」と思ってしまった。

クーペが大好物の筆者にとって、ルーフを閉じた状態が断トツに美しいRFもまた、新車で購入すべき1台だと思っている。特に今回はマシングレーのボディカラーだったが、ソウルレッドメタリックを纏った時の艶やかさといったら……。

電動ハードトップを持つ、『マツダ・ロードスターRF』。取材車のグレードはVS。
電動ハードトップを持つ、『マツダロードスターRF』。取材車のグレードはVS。    平井大介

ただ、以前の試乗でルーフを閉じた時に重量物が上にある感じが気になって、個人的に運転するならソフトトップ、ガレージで眺めるならRFと結論付けていた。ところが今回、その印象が一変した。正確に書くと、『筆者が年齢を重ねたことでRFのほうが身体にフィットするようになった』というのが正しそう。

実は今回ロードスターSに乗っていて不覚にも、「若かったらこれで日本一周したかもなぁ」と思ってしまった。相変わらず手足の延長にクルマがある感覚は素晴らしいのだが、逆に長い距離を乗っているうちにだんだん疲れてしまったのだ。

しかしソフトトップの1.5Lに対し、RFは2Lエンジンで、しかも今回お借りしたのがATだったので、高速道路を使用した長距離移動の多い現在のライフスタイルで、GT的に使用する乗り方がジャストフィット。適度に重心が低くて運動性能が高く、しかも快適装備はひと通り装備している。内装のレザーシートもいい塩梅だ。

トドメを刺されたのが、静岡県東部の自宅から国道1号線を箱根方面に登り、そこから箱根新道を下り、そのまま西湘バイパスで早朝に海風を受けて走ってしまったこと。

うわああああああああ……!!!!

すみません、また取り乱しました。しかしこのあまりにも気持ちいい瞬間が決め手となり、2025年晩夏のロードスター・ベストバイは、このRFとなったのである。しかも、2015年から何度もロードスターを試乗してきて「ATでもいいかも」と思ったのは、これが初めてのことだった。

「ちょっと旧いかな」と思う瞬間

最近、取材で電動化されたモデルに乗ることが多く、これまで理想としてきたクルマ、特にスポーツカーの価値観は『旧き佳きもの』になりつつあると感じている。正直に書くと、今回試乗した2台のロードスターも「ちょっと旧いかな」と思う瞬間があった。

もちろん、旧いことは悪いことではない。それを大前提として、マツダ・ロードスターはいい意味で『新車で購入できるクラシックカー』なのだと思う。そしてスポーツカー、いや自動車の基本中の基本を教えてくれる『メートル原器』のような存在でもある。

ロードスターは、自動車の基本中の基本を教えてくれる『メートル原器』のような存在だ。
ロードスターは、自動車の基本中の基本を教えてくれる『メートル原器』のような存在だ。    平井大介

こんな偉大なクルマを10年作り続けてきたマツダに対しては尊敬の気持ちしかないし、もっと遡れば、初代NA時代から合わせて36年とは……。どうやら今回の『ロードスター欲しい病』は、しばらく治まりそうにないようだ。

そしてこのマツダ話、実はまだ次回に続きます。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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