メルセデス・ベンツCLA 250+(2) 遂に薄れたモデル3のアドバンテージ EVを次のフェイズへ

公開 : 2025.10.29 19:10

ほぼ白紙から設計された新型 滑らかなボディはCd値0.21 デジタル全面の壮観なダッシュボード 期待より狭い車内 走りはしっかり小さな「ベンツ」 能力を物語る落ち着き UK編集部が試乗

走りはしっかり小さな「ベンツ」

圧巻の航続距離が主張される、バッテリーEVとなった新しいメルセデス・ベンツCLA。走りは、しっかり小さな「ベンツ」らしい。後輪駆動で271psを発揮する、250+の速さは驚くほどではないものの、不満なし。求めたスピードを得やすい。

全力加速を求めると、2速ATの変速をうっすら感取できる。ステアリングコラムから伸びるシフトセレクターの先端には、パワーボタン。だが、必要に応じてシステムがフルパワーを引き出すため、あえて押す必要性は低いだろう。

メルセデス・ベンツCLA 250+ ウィズEQテクノロジー AMGライン・エディション(英国仕様)
メルセデス・ベンツCLA 250+ ウィズEQテクノロジー AMGライン・エディション(英国仕様)

ブレーキは、新開発のバイワイヤ・システム。スポンジーなペダルの感触とはお別れし、自然な踏み心地を得ている。回生ブレーキは、シフトセレクターを前後に倒すと調整可能。惰性走行やワンペダルドライブにも対応する。

後輪駆動で、ステアリングホイールの反応は線形的。キックバックは殆どない。コンフォートとエコ・モードでは少し軽すぎ、スポーツ・モードでは細かな感触が薄くなる印象ながら、不満を抱くほどではないだろう。

シャシー能力の高さを物語る落ち着き

乗り心地は、条件の厳しい英国の一般道でも良好。荒れたアスファルトでも落ち着きは保たれ、凹凸の存在を強くは感じさせない。シャシー能力の高さを物語るように。

ボディが浮き上がるような、大きな起伏がある高速道路でも印象は変わらず。コンフォート・モード時は少し姿勢制御を引き締め、スポーツ・モード時は逆にしなやかさを高めても良さそうだが、殆どのユーザーは気に留めないと思う。

メルセデス・ベンツCLA 250+ ウィズEQテクノロジー AMGライン・エディション(英国仕様)
メルセデス・ベンツCLA 250+ ウィズEQテクノロジー AMGライン・エディション(英国仕様)

乾燥した路面なら、後輪駆動でもトラクションに不足なし。ツインモーターで四輪駆動の350 4マティックにも短時間試乗したが、一層安定性は優れていた。天候を問わず、目的地へ短時間で到着できそうだ。

多くのメルセデス・ベンツと同様に、アダプティブ・クルーズコントロールの制御は安定。滑らかに速度が変化し、反応は機敏で、ヤキモキすることはなさそう。運転支援システムの不要な機能は、簡単にオフにできる。

モデル3のアドバンテージは遂に薄れた

現状では、急速充電器は電圧800Vのものだけが利用可能で、最大320kWまで対応する。だが2026年には、400Vの急速充電にも対応するオプションが提供されるという。

試乗したAMGライン・エディションのCLA 250+で得た電費は、平均7.7km/kWh。カタログ値に迫る数字で、満充電なら660km近く走れる計算になる。短い試乗ではあったが、ツインモーターの350 4マティックが同等の電費だったことにも、驚かされた。

メルセデス・ベンツCLA 250+ ウィズEQテクノロジー AMGライン・エディション(英国仕様)
メルセデス・ベンツCLA 250+ ウィズEQテクノロジー AMGライン・エディション(英国仕様)

後輪駆動のテスラ・モデル3 ロングレンジは、カタログ値で7.4km/kWhを誇ってきた。そのアドバンテージは、遂に薄れることになった。

試乗車の価格は、英国では4万9375ポンド(約1007万円)。AMGライン・プレミアムエディションは、5万1770ポンド(約1056万円)へ上昇する。上位グレードになるほど、お得感が出るように思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    役職:編集長
    50年にわたりクルマのテストと執筆に携わり、その半分以上の期間を、1895年創刊の世界最古の自動車専門誌AUTOCARの編集長として過ごしてきた。豪州でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、英国に移住してからもさまざまな媒体で活動。自身で創刊した自動車雑誌が出版社の目にとまり、AUTOCARと合流することに。コベントリー大学の客員教授や英国自動車博物館の理事も務める。クルマと自動車業界を愛してやまない。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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