「ほぼ白紙」から新設計 メルセデス・ベンツCLA 250+(1) 航続778kmのハードをチェック

公開 : 2025.10.29 19:05

ほぼ白紙から設計された新型 滑らかなボディはCd値0.21 デジタル全面の壮観なダッシュボード 期待より狭い車内 走りはしっかり小さな「ベンツ」 能力を物語る落ち着き UK編集部が試乗

ほぼ白紙から設計された新型CLA

新しいメルセデス・ベンツCLA ウィズEQテクノロジーは、英国で市販されるバッテリーEVで最長の航続距離を誇る。実に、85.0kWhの駆動用バッテリーで778km。また価格は4万5615ポンド(約930万円)からで、テスラモデル3のロングレンジ版へ並ぶ。

アメリカには、ルーシッド・エアという更に長い航続距離を主張するモデルもある。だが、遥かに大きいボディを持ち、駆動用バッテリーも巨大。メルセデス・ベンツは、エネルギー効率を最大限に伸ばすことへ注力している。

メルセデス・ベンツCLA 250+ ウィズEQテクノロジー AMGライン・エディション(英国仕様)
メルセデス・ベンツCLA 250+ ウィズEQテクノロジー AMGライン・エディション(英国仕様)

電費は、カタログ値で8.0km/kWh。少ないエネルギーで大きな仕事を得るという考えは、技術者なら当たり前のものかもしれない。だが、その実現は簡単ではない。

果たして、CLAはほぼ白紙の状態から設計された。プラットフォームもまったく新しい。EVを主軸に開発されたものの、ハイブリッドにも対応し、ドイツ南西、ラシュタットの同じラインで生産も可能だという。

滑らかなカーブを描くボディはCd値0.21

CLAで注目すべき新技術が、駆動用モーター。高効率なシリコンカーバイドを用いたインバーターを採用し、リアに載るユニットには2速ATが組まれる。モーターは幅広い回転域で高いトルクを生み出すが、低速域と高速域での効率を求めた結果だという。

制御電圧は800V。これにより、ケーブルを細く軽量にでき、急速充電は最大320kWへ対応する。四輪駆動の場合、前側にもモーターが追加されるが、高効率な同期ユニットを採用。必要ならクラッチでタイヤと切り離し、ロスを減らしている。

メルセデス・ベンツCLA 250+ ウィズEQテクノロジー AMGライン・エディション(英国仕様)
メルセデス・ベンツCLA 250+ ウィズEQテクノロジー AMGライン・エディション(英国仕様)

効率が追求されたのは、少し癖がある、滑らかなカーブを描くボディも同じ。最も空気抵抗の小さい仕様なら、Cd値は0.21とのこと。AMGラインで大径ホイールを選んでも、0.24と低抵抗。サスペンションのアームにも、エアロカバーが備わる。

英国市場で先に提供されるのは、後輪駆動のCLA 250+。追って四輪駆動の350 4マティックが続く。駆動用バッテリーは、小容量な58kWhユニットも追加予定とのこと。

デジタル技術が全面に広がる壮観な眺め

インテリアは、近年のメルセデス・ベンツの様式を踏襲。ダッシュボード正面はフラットなパネル状で、サーフボードを置いたよう。そこには、10.3インチのメーター用モニターと、中央と助手席側へ14.0インチのタッチモニターが実装される。

助手席側はオプションだが、デジタル技術が全面に広がる眺めは壮観。目新しい反面、プレミアムさとは一致しないようにも思う。内装の特別感は限定的だろう。

メルセデス・ベンツCLA 250+ ウィズEQテクノロジー AMGライン・エディション(英国仕様)
メルセデス・ベンツCLA 250+ ウィズEQテクノロジー AMGライン・エディション(英国仕様)

ソフトウエアは最新だが、馴染みあるインターフェイスで扱いやすい。ホーム画面はナビのマップで、表示エリア下部にエアコンなどのショートカットが並ぶ。主な機能は1・2回のタップで操作可能。シートヒーターは、メニューを掘り下げてオンにする。

チャットGPTとグーグル・ジェミニを利用した、音声操作にも対応。認識力は高く、話せばシートヒーターをオンにしてくれるが、最寄りの充電器の空き状況は教えてもらえなかった。純正のナビは優秀といえるが。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    役職:編集長
    50年にわたりクルマのテストと執筆に携わり、その半分以上の期間を、1895年創刊の世界最古の自動車専門誌AUTOCARの編集長として過ごしてきた。豪州でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、英国に移住してからもさまざまな媒体で活動。自身で創刊した自動車雑誌が出版社の目にとまり、AUTOCARと合流することに。コベントリー大学の客員教授や英国自動車博物館の理事も務める。クルマと自動車業界を愛してやまない。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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