【スーパーカー超王が斬る】F140系V12エンジン、ひとつの完成形!フェラーリ12チリンドリ日本国内初乗り

公開 : 2025.10.22 11:45

12気筒を意味する車名を掲げた『フェラーリ12チリンドリ』に、スーパーカー超王こと山崎元裕が試乗。20年以上続いてきたF140系エンジン、ひとつの完成形だと超王は評します。日本国内での初乗り、その第一印象は?

フェラーリが創業以来の伝統とするエンジン形式

『12Cilindri』、『12チリンドリ』、『ドーディチ・チリンドリ』。この原稿を書くにあたって車名をどう表記したらよいのかにずいぶんと悩んだ。

ちなみにこれらが意味するのは『12気筒』で、それはもちろんフェラーリが創業以来の伝統とするエンジン形式。それに敬意を表して今回はあえて現地表記のとおり『12Cilindri』を使おうと思う。

『12気筒』を意味する車名を持つフェラーリ、『12Cilindri』(ドーディチ・チリンドリ)。
『12気筒』を意味する車名を持つフェラーリ、『12Cilindri』(ドーディチ・チリンドリ)。    山本佳吾

デイトナ・スタイルのシートに身を委ねて前方を見ると、そこには運転席側と助手席側でほぼ対称なデザインを持つインパネがある。さらにセンターコンソールには10.25インチサイズのディスプレイも備わる。走行中にタッチことが多いスイッチが統合されたステアリングホイールとともに、その機能性や操作性はさすがに最新の作である。

ステアリングホールのリム上にあるタッチスイッチをプッシュして、フロントミドシップされるエンジンを始動させると、これまでドライブしてきた12Cilindri、すなわちV型12気筒モデルの姿が次々に思い浮かんできた。

大きな転機となったのは、あの『エンツォ』から基本設計を継承した、『F140C』型と呼ばれる5999ccのV型12気筒エンジンを搭載して、2006年に誕生した『599GTBフィオラノ』(日本での表記は599)だった。

それ以降フェラーリは、『599GTO』、『F12ベルリネッタ』、『F12tdf』、『812スーパーファスト』、『812コンペティツィオーネ』、そしてこの12Cilindriに至るまでF140系エンジンを20年近く進化させ続けてきたのだ。

ちなみに12Cilindriの『F140HD』型エンジンの排気量は6496ccで、これは前作の812シリーズに等しいが、新たなチタン製コンロッドやアルミニウム製ピストン、カムシャフト、F1由来のバルブトレーンの採用などで、最高出力は830psと812コンペティツィオーネのそれを維持することになった。

一方で最大トルクの687Nmは同様の比較においては若干低いスペックになるが、トルク特性の見直しで実用域での扱いやすさはより高まったとフェラーリは説明する。レブリミットは9500rpmの設定だ。

グランツーリズモ的な性格を強く意識

ドライブのスタートは、朝から降り続いていた雨が止んだ直後というタイミングだった。まずは必然の行動ともいうべきだろう、ステアリングホイール上にある『マネッティーノ』で『WET』のドライビングモードを選択して、アクセルペダルを静かに踏み込む。

スタートした瞬間からまず驚かされるのは、最近のスーパースポーツの多くもまたそうであるように、シャシーやサスペンションが持つ剛性、そして巧みなフットワークの動きが演出する快適な乗り心地だ。

シャシーやサスペンションが持つ剛性、そして巧みなフットワークの動きが快適な乗り心地を演出。
シャシーやサスペンションが持つ剛性、そして巧みなフットワークの動きが快適な乗り心地を演出。    山本佳吾

12Cilindriは最高速では0→100km/hを2.9秒で加速し、最高速では340km/h以上を達成するモデルだが、フェラーリはさらにそれにGT(=グランツーリズモ)的な性格を加味することを強く意識したことが想像される。

もちろんドライビングモードを『スポーツ』、『レース』とよりハードな方向にセットしていけば、12Cilindriは全長×全幅×全高で4733×2176×1292mmというボディサイズを意識させない、きわめて魅力的なコーナリングマシンとしての動きを披露するようになる。エンジンをフロントミドシップし、8速DCTをリアアクスル上にマウントする構造としたことで48.4:51.6を実現した前後重量配分も理想的なものといえるだろう。

実際のコーナリングは常にナチュラルな印象に終始し、またその高いコントロール性と安定性にも感動させられるが、その背景にはSSC8.0(サイドスリップ・アングル・コントロール)やABS Evo、PCV3.0(バーチャル・ショート・ホイールベース)、TC(トラクション・コントロール)、eDiff(電子制御デファレンシャル)、6Dセンサーといった、フェラーリが誇る最先端のデバイスが常時最適な姿勢制御を行っているとう事実を忘れてはならない。

路面が徐々にドライコンディションとなっていったのを確認して、スポーツ・モードでV型12気筒エンジンのパフォーマンスをフルに味わってみた。トルクバンドの幅広さは確かにこの12Cilindriの大きな特長。だがやはり感動的なのは高速域でのスムーズさとパワーフィールで、ここにはこれまで20年以上の長きにわたって改良が続けられてきたF140系エンジンのひとつの完成形が見出せる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    山崎元裕

    Motohiro Yamazaki

    1963年生まれ。青山学院大学卒。自動車雑誌編集部を経て、モータージャーナリストとして独立。「スーパーカー大王」の異名を持つ。フツーのモータージャーナリストとして試乗記事を多く自動車雑誌、自動車ウェブ媒体に寄稿する。特にスーパーカーに関する記事は得意。
  • 撮影

    山本佳吾

    Keigo Yamamoto

    1975年大阪生まれ。阪神タイガースと鉄道とラリーが大好物。ちょっとだけ長い大学生活を経てフリーターに。日本初開催のWRC観戦をきっかけにカメラマンとなる。ここ数年はERCや欧州の国内選手権にまで手を出してしまい収拾がつかない模様。ラリー取材ついでの海外乗り鉄旅がもっぱらの楽しみ。格安航空券を見つけることが得意だが飛行機は苦手。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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