世界20~30台、日本では唯一登録の超レア車!貴方は『ツェンダップ・ヤヌス』を知っているか?【コッパ・チェントロ・ジャッポーネ】

公開 : 2025.11.23 12:05

愛知県名古屋市で、今年で第4回となった『コッパ・チェントロ・ジャッポーネ』が10月12~13日に開催されました。ここでは高桑秀典が、日本では唯一登録の超レア車『ツェンダップ・ヤヌス』を紹介します。

グランプレミオ・サカエもメインコンテンツ

愛知県が後援している『コッパ・チェントロ・ジャッポーネ』は、久屋大通公園の一帯を会場とした『コンコルソデレガンツァ』と、名古屋市役所をスタート地点とした『グランプレミオ・サカエ』をメインコンテンツとしている。

今回は名城公園エリアで世界ラリー選手権『ラリージャパン2025』を盛り上げるコンテンツも用意されたが、恒例になっているのはこの両コンテンツなのだ。

150台が出走したグランプレミオ・サカエの中でも非常に珍しいクルマを発見。
150台が出走したグランプレミオ・サカエの中でも非常に珍しいクルマを発見。    高桑秀典

コンコルソデレガンツァは、日本語で記すと『優雅さの競争』ということになる。グランプレミオはレースの名称としてよく使われる言葉だが、CCJでは久屋大通をはじめとする名古屋の中心部を駆け巡り、起点となった市役所にゴールするパレードランのようなスタイルで実施している。

古今東西の様ざまな年式のクルマたちが街中を風を切って疾走するので、毎年、いわゆる『走る自動車博物館』を楽しみにしているギャラリーも多いのであった。

ちなみに、初日に実施されたコッパ500(チンクエチェント)は、ガーデン埠頭東駐車場を出発し、1933年に竣工した風格ある名古屋市役所にゴールするというルートを走行。世界屈指の愛らしいクルマたちが街中を走り回ったので、こちらも大いに盛り上がった。

150台が出走したグランプレミオ・サカエでは非常に珍しいクルマも雄姿を披露し、なかでもギャラリーから注目されていたのが『ツェンダップ・ヤヌス』だった。

日本で登録されている唯一の車両

第二次世界大戦時に軍用バイクを製造していたドイツの『ツェンダップ』が、終戦後に一年間だけ生産した4輪車が『ヤヌス』である。

全長2890mm、全幅1410mm、全高1400mmというミニマムサイズのバブルカー(カルトカーと呼んでもいいかもしれない)で、車体前方にある運転席のドアだけではなく、後部ドアもフロントと同じ角度で開く。

ヤヌスはコンコルソデレガンツァのバブルカー・クラスBで特別賞を獲得。
ヤヌスはコンコルソデレガンツァのバブルカー・クラスBで特別賞を獲得。    高桑秀典

そのため、前後対称に近いプロポーションになっているといえ、前と後ろに反対向きのふたつの顔を持つのが特徴となるローマ神話の双面神、ヤヌスの名が与えられた。

後部座席は後ろ向きに配置されており、前後シートのレイアウトを変更するとフルフラットになって車内で寝ることすらできる。小さなボディの中に凄いギミックが備わっているのだ。

可動しているヤヌスは世界で20~30台ほどと言われており、日本では入佐さんが所有しているこの1台だけが登録されている。大変貴重な現車は1957年式だ。

どういう仕組みで動いているのかオーナーの入佐さんも当初把握できなかったが、メーター内にシフトポジションを表示するアナログのインジケーターがあり、シフトチェンジと連動し、これが今でもちゃんと動いている。

納車後、しばらくしてから、このインジケーターの存在に気づいたらしく、最初のうちは何速で走っているのか分からなかったそうだ。

車体の中央部分に搭載されているエンジンは空冷2ストローク単気筒で、排気量は245ccだ。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    高桑秀典

    Hidenori Takakuwa

    1971年生まれ。デジタルカメラの性能が著しく向上したことにより、自ら写真まで撮影するようになったが、本業はフリーランスのライター兼エディター。ミニチュアカーと旧車に深い愛情を注いでおり、1974年式アルファ・ロメオGT1600ジュニアを1998年から愛用中(ボディカラーは水色)。2児の父。往年の日産車も大好きなので、長男の名は「国光」。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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